教室の窓から差し込む午後の光が、柔らかく私の髪を照らす。
 蓮先輩は隣に座り、私の手をそっと握っている。

「ひまり……今日も可愛いな」

 耳元で低くささやく声に、胸がぎゅっとなる。
 照れながらも、自然と手を握り返す。

「そ、そんなこと言わないでください……」

 私の小さな声に、蓮先輩はにやりと笑い、さらに手を強く握った。

「言うに決まってるだろ。俺の姫だ、ひまり」

 その一言で、心臓が飛び跳ねる。
 教室の中はいつも通りの騒がしさだけど、二人だけの世界に閉じ込められたような感覚になる。

 授業中、黒薔薇組のメンバーがちらっとこちらを見るけれど、蓮先輩は気にせず、私の髪をそっと撫でる。
 その指先の温かさに、思わず小さく息を漏らしてしまう。

「……蓮先輩……」

 小さく呼ぶと、彼は目を細めて微笑む。
 そして、私の肩に軽く頭を乗せてくる。

「ひまり……ずっと俺のそばにいろ。誰にも渡さない」

 その言葉に、胸がじんわり熱くなる。
 思わず私も彼に体を寄せ、腕の中で小さく頷いた。

「はい……ずっと、蓮先輩のそばにいます」

 休み時間になると、蓮先輩は人目を気にしながらも、私の手をぎゅっと握り、肩に腕を回す。
 教室の机や椅子の間で、こっそりと見せる溺愛。

 放課後も、廊下を歩くときに私の腰に手を回し、顔を覗き込む。
 その度に、胸がドキドキして、周りの生徒たちの視線なんて気にならない。

 ――こんなに甘やかされて、守られて、愛されるのは初めてだ。
 でも、胸の奥から湧き上がる安心感と幸福に、自然と笑顔になる。

 蓮先輩の腕の中で、私は今日も思う。

 ――私の幸せは、ここにある。
 蓮先輩のそばに、ずっと、ずっと――。