楽しかったデートも終わり、蓮先輩と手をつないで帰る帰り道。
 夜風が少し肌寒くて、でも胸の奥は温かい。
 今日一日、蓮先輩と一緒に過ごせたことが、まだ夢みたいに思える。

「ひまり、もうすぐだな」

 低くて落ち着いた声。
 その声に、胸がぎゅっとなる。
 私は小さく頷いた。

「はい……」

 歩幅を合わせながら、少しずつ家の前に近づく。
 でも、別れが近いのが少し寂しくて、自然と手を握り返してしまう。

「……ひまり」

 蓮先輩が立ち止まり、私の目を真っ直ぐに見つめる。
 息が止まりそうになるほどの視線に、体が小さく震える。

「今日、一日……楽しかったな」

「はい、蓮先輩と一緒にいられて、すごく楽しかったです」

 照れくさくて、でも心からの言葉を伝えると、蓮先輩は少し微笑み、私の肩に手を回して軽く引き寄せる。

「……ひまり、今日はずっと俺のそばにいてくれ」

 その言葉に、胸がいっぱいになる。
 私も自然と体を彼の方に寄せ、顔を少し上げた。

 そして、ゆっくりと蓮先輩が近づいてくる。
 唇が触れそうになった瞬間、心臓が跳ねる。

「……蓮先輩」

 小さく名前を呼ぶと、彼は笑わずに、そのまま優しく唇を重ねてきた。
 柔らかく、温かく、でもしっかりとした力があって、胸がじんわり熱くなる。

 初めてのキスに、思わず目を閉じ、体を少し彼に預ける。
 世界が静かになり、夜風だけがそっと頬を撫でる。

 唇を離したあとも、蓮先輩は私の手をぎゅっと握ったまま、静かに微笑む。

「……俺の姫だ、ひまり」

 その言葉に、私は頬を赤くして小さくうなずく。

「はい……ずっと、蓮先輩の姫です」

 デートの余韻と初キスの余熱を胸に、私は今日の幸せを噛み締めながら、彼と家の前で別れを惜しむのだった。