放課後、教室の窓から差し込む夕日が長く影を伸ばしていた。
 來人くんが私の前に立ち、真剣な目でこちらを見つめている。

「桜井ひまり……俺、本気だ。
 だから、答えを聞かせてくれ」

 胸がぎゅっと締め付けられる。
 昨日も今日も、來人くんの気持ちは本物だと伝わってきて、心が揺れる。

 でも、私の心はもう決まっている。
 蓮先輩の温かさ、独占してくれる安心感――
 その存在が、私の中で絶対的なものになっていた。

 私は小さく息をつき、はっきりと告げた。

「……ごめんなさい。
 來人くんの気持ちは嬉しいけど、私……蓮先輩のことが好きです」

 來人の表情が一瞬、止まったように見える。
 少し眉をひそめ、そして苦笑いを浮かべた。

「……そっか、分かった。
 俺の気持ちだけど……受け入れてもらえないか」

 でも私は静かに首を振る。

「うん……ごめんなさい。
 でも、來人くんのことは嫌いじゃない。
 でも、これ以上進めることはできない」

 來人くんは少し視線を落とし、深く息をついた。
 そして、私を見上げると、真剣なまま小さく言った。

「……分かったよ。
 ひまりが幸せなら、それでいい」

 その言葉に、少し胸が痛むけれど、心の中は清々しい。
 もう迷いはない。私の気持ちは、蓮先輩に向かっている。

 夕日が教室をオレンジ色に染める中、私は静かに席に座り直した。
 ――これで、二人の間の気持ちの整理がついた。