放課後。校庭の木陰に夕陽が差し込み、長く伸びた影が私たちを包んでいる。
友達と別れ、一人で帰ろうとした瞬間、背後から低く響く声がした。

「ひまり」

振り返ると、蓮がいつの間にか私の横に立っていた。黒髪の隙間から覗く鋭い瞳に、思わず息が止まる。

「え……あ、あの……今日は一人で帰るつもりだったんですけど」
少し困惑しながら言うと、蓮は無言で私の手を握り、自分の腕に引き寄せる。

「俺の姫が一人で帰るなんて許さない」
低く囁かれると、胸がぎゅっと締め付けられる。怖いのに、なぜか心の奥が甘く温かくなる。

歩き始めると、私の手をしっかりと握り、周囲の視線も気にせず私だけを見つめてくる。
「怖い……でも……守られてる」
心の中で小さくつぶやく。独占される怖さと安心感が入り混じり、自然と彼に体が寄ってしまう。

途中、他の生徒が話しかけてきても、蓮は私を自分の体で少し隠すように立ち、低い声で言った。
「俺の姫に話しかけるな」

私は頬を赤らめ、少し戸惑う。でも、その言葉の裏には強い愛情と守りたい気持ちが感じられて、胸が熱くなる。

帰り道、蓮は私の肩に腕を回し、囁くように言った。
「誰が何と言おうと、俺の姫は俺だけのものだ」

夕陽に照らされた瞳が、独占欲と優しさで輝いている。
――怖いけど、守られる心地よさがこんなにも甘いなんて……

私は静かに頷くしかなかった。
――逃げられない、でも……幸せな気持ちも混ざっている。

手を握られ、肩に腕を回されながら歩く帰り道。
怖くて甘い、この感覚に、私は自然と身を任せるのだった。