朝起きてカップ焼きそば。
昼は当然カップ焼きそば。
夜ももちろんカップ焼きそば。
夜食はカップ焼きそばがメイン。

中毒だ。完全に。
グルメなどとは1万光年の乖離だ。
ただ、彼は21種類のカップ焼きそばを
使い分ける。
3食x7日=21 毎日、毎食変えるのだ。
それが彼の自慢であった。

そんな食生活なので
健康など、先カンブリア時代に
置き忘れた遺物だ。

性格は暴力的になり
思考は怠惰になり
体型は超肥満になり
顔色は黒碁石にようになり
頭は禿げまくり
息は臭すぎ
耳垢は吹き出し
目ヤニはアルプスのように盛り上がる。

風呂?
そんなもんはカップ焼きそばの敵だ!
意味不明な暴言を大声でさけびながら
今日もカップ焼きそばを食う。

あ、足も強烈に臭い!!

買い物に行っても
「おい!カップ焼きそばどこや!!」
何を聴くにも喧嘩腰!!
「はよせーや!!しばくど!」
と、5秒待てないヒバゴン。

そのあまりの体臭のえげつなさに
スーパーでは、男の回るコースに
毒ガスの回廊ができた。

カゴにカップ焼きそばを80個詰め込み
レジで
「はよせーや!!しばくど!」
と怒鳴り散らす。

もちろん、強烈な息の臭さ!!!
怒鳴るとさらに
サリンのような唾液も飛びまくる!

もう、迷惑を通り越して
北朝鮮の火星2号並みの恐怖!

そう!恐怖!!!!!

店外に出ても
カゴは自転車置き場に投げつけ
カートはわざと隣の家の前に置き
レシートには鼻くそをつけて
コンビニのATMに突っ込む。

帰宅途中も
各家の呼び鈴を押しまくり
ポストには噛んでいたガムを投げ入れ
止めている自転車をパンクさせ
車のフロントガラスに痰を吐きまくる!

築87年の2Kアパートに戻ると
隣の家の戸をバンバン叩き
住人が出てくると
「俺とちゃうわ!!!俺か!!」
「俺がやった証拠だせや!!!」
と暴言を吐きまくり
住人が退去すると
「こら、おんどれ!逃げるんか!」
とドアを蹴りまくる。

家に入ってカギを閉めようとするが
化石並みの機能なので上手く動くはずもなく
それがまた男を発狂の世界へといざなう。
「おんどれ鍵!!回れや!!」
蹴り倒してついに取っ手が取れた。

大家に深夜3時に電話し
「こら!おんどれ!!
   はよ修理せーや!!!」
と電話口で怒鳴り散らし
近所がほとんど目覚めると
「何や!!文句あるんか!!」
と、パンツ一丁で裸足で
そこまで走っていき
8m先からでも鼻を劈く体臭をまき散らし
3回洗濯しても取れない異臭の痰を吐きかけ
意味不明のお題目を30分唱えて
戻る。

湯が沸いた。
一回に15リットル沸騰させる。
焼きそばには500cc必要だが
もしもの為だ。

とにかく実は臆病である。
もし?まさか?はやり?そうかも?
猜疑心が心の中の99,9882%を占めているので
安心という感情を生まれてこの方
感じたことが無い。

14,5リットルの熱湯は
窓の外も確認せずそこから捨てる
何度も火傷になりかけた人もいる
失敗して自分が浴びる事がほとんどだ
だから、皮膚がとても分厚い。
面の皮も暑い
だから真冬でも半袖半ズボン裸足。

靴下なんてクソくらえ!
長ズボンなどクソくらえ!
長袖などクソくらえ!!!!!!

なのにダウンジャケットや
スキーパンツなど
防寒対策には余念がない。

靴は持っていない
クロックスが23足。
すべて盗んだものだ。
だから左右大きさが違う。
男はそれに合わせるため
右足の親指を切断した。

翌日、左右同じサイズがあるのに気付いた。

クロックスを切って短くした
「よし、OKだ!!!!」
あまりの嬉しさに近所を走り回った。

路面には無数の血痕が残っていた。

時々献血に行く。
でも、最初の検査で必ず不合格だ。
「申しわけありません。ご協力いただけない結果となりました」
とまだ話が続いているのに
「なんでや!なんでできひんのや!!」
「しばくど!!」
と喚き散らし
タダのドリンクを好きなだけ
飲んでいいからと言って
なんとか収まった。
男は持ってきた20リットルの
灯油のタンクに次々と飲料を移し替えた
「あの・・・・・」

「なんや!文句あるんか!」
「なら警察に言えや!!!しばくど!」

警察が来た。
男は取り調べを受けたが
あまりの臭さに警察も卒倒し
取り調べは1分で終わり解放された。

歩いて帰る途中
信号は無視
車道へ飛び出し
歩行者には唾をかけ
吸い殻入れをひっくり返し
自販機のボタンに鼻くそをつけ
繋がれている犬に足を嗅がせる

犬は倒れ、意識を失った。

そして今日も男の夕食が始まった

カップ焼きそば。

毎日毎日毎日毎日
さすがにこの男でも
嫌気が差してきた
そうすると今度は
カップ焼きそばに腹が立ってきた。

「なんで80個もあるんや!!」

自分が買ったからだ。

「なんで毎日カップ焼きそばなんや!」

それしか無いからだ。

「なんでこんな腹立つことばっかりなんや!」

それは
栄養のバランスが崩れているからだ。

笑っていられないよ。

あなたはもう、
コイツの近くまで来ているぞ。