政略的皇女は隣国の第2皇子に嫁ぐ

こうして無事執務室に入ることができました。
中は本や紙のにおいがして、いかにもお仕事部屋という感じがしました。
テオドール様が使うテーブルには大量の資料が山積みにやっておりました。
第2皇子でもこんなに働かなければならないのですね…。

私は大人しく応接用のイスに座るとお茶を一口飲みました。


「テオドール様はいつもこんなにお仕事を?」

「はい。兄の分の仕事も請け負っていますので」

そう言ってお茶を飲みながらペンを走らせる。
私と一体一でおしゃべりする余裕もないみたいですわね。


「カシアン様はいつも何をしていらっしゃるのです?」

「先程見たでしょう。愛人に夢中なのですよ。だから僕はああはなりたくないのです。愛なんて信じていません。なので昨日言った通り、私に愛を求めるなと言ったのです」

「そう…ですの…」


なんだかいろいろと訳ありな感じがします。
今すぐに心を開いてくれる訳ではないと思いますが、私は一か八かこう口を開いていました。


「テオドール様、私も真実の愛というものは知りません。親からはきちんと育てられましたが、それはなんだか違う気がして…。お互い似た者同士、これから愛を見つけてみませんか?」


「エイルリス皇女…」


その瞬間、私ははっと我に帰っていました。
何を言っているんだろうと。
私らしくない。
私は人を疑い、信用する人は少なく、上辺だけの人間で生きていこうとアルドリックにいた頃から決めてきたではありませんか。



「あ、その…今の言葉は忘れてください!」


「…いえ、忘れません」


「え…?」


「エイルリス皇女、時間はかかるかもしれませんが、やはり僕たち夫婦としてうまくやっていきませんか?」


「テオドール様…」


するとテオドール様はいつの間にか私の近くまで来て、真剣な顔でこちらを見つめていました。