そうこうしているうちに馬車はウォルタインの首都に入ったようです。

街並みは私の祖国アルドリックに負けず劣らずといったところでしょうか。
今度お忍びで街を散策するのも楽しそうですわね。
距離感は隣国ですからそこまでかからないのが助かるところです。

「エイルリス皇女様、ご到着です!」

そう言って馬車の扉が開かれる。


ふわっと風が吹き、馬車から降りる私をエスコートしてくれたのは顔に似合わず大きめですらっとした指を持つ人、それがテオドール様でした。


「長旅、お疲れ様でございました、エイルリス皇女」


その方は黒髪にサファイアのような青い瞳をもつお方。
静かに微笑む佇まいは洗練されていて私の夫になるにはとても素晴らしいと思う程でした。


あの時までは。