秘密な恋愛

(デート···)

授業中。
黒板の文字は目に入っているのに、
まったく頭に入らない。

“空けとけよ”

その一言が、
何度も何度も頭の中を巡る。

ふと
(前にも、こんなこと···あったような···)

ふわっと、曖昧な感覚。

でも掴めないまま、時間だけが過ぎていく。



放課後。
やわらかな西日が差し込む教室。

「えっ、デート?!」
大きな声をあげたのは由奈。

「なんで由奈がそんな嬉しそうなの、笑」
「だってさ〜っ。嬉しいじゃない!こっちがドキドキするっ」


「ねぇ、由奈···」
「ん?」

芽依は少し視線を落とす。
「佑陽くんの彼女だったってことはさ··その···普通にデートとか、してたんだよね?」

きょとん、とする由奈。
「当たり前じゃない」
さらっと言われて、芽依の顔が一気に赤くなる。

「えっ、どんな感じで?」
「どんなって、普通だよ?映画行ったり、遊園地行ったり」


「えぇ···っ」
想像した瞬間、心臓が跳ねる。

「やっぱり緊張する!!私、大丈夫かな···」

机に伏せる芽依。

由奈はくすっと笑い、優しく言う。
「大丈夫に決まってるでしょ」


「私どうしてたらいい?」
少しだけ不安の混じった声。

「普通にしてたら大丈夫だよ。あとは佑陽くんに任せな?

「2人きりだよ?」

ぽかん、とする由奈。
「何今さら〜。2人きりなんて何度もあったじゃない」
「1日だよ!?緊張してもたないよ···」
その必死さに、由奈は思わず笑ってしまう。


「芽依さぁ」
「なに?」

「やっぱり、佑陽くんのこと意識してるんだよ」

「へっ!?///」
「じゃなきゃ、そんなに緊張しないよ?佑陽くん、こんな芽依見たら絶対嬉しいよ」

「からかわないでよ、由奈〜··」

由奈は少しだけ優しい声になり、
「とりあえず楽しみなよ。ね?ほら、服どうするか考えなきゃ」

「あっ、そうだよ!どうしよ···」
慌ててスマホを取り出す芽依。
あれこれ悩み始める姿を見ながら、
由奈は内心ほっとしていた。


よかった。
芽依が、ちゃんと悩んでる。
佑陽のことで。

前みたいに···


窓の外の夕焼けが、少しだけ優しく見えた。