秘密な恋愛

芽依は、
頬を赤くしたまま視線を逸らしていたけれど、
少しだけ間を置いて、そっと口を開いた。

「佑陽くん?」

「ん?」
椅子に座った佑陽は、ふと顔を上げる。


「はじめから、なら···」
一度言葉を選ぶように、
芽依は小さく息を吸って。

「佑陽くんのこと、教えて···?」

その言葉に、佑陽は一瞬きょとんとして
すぐに、やわらかく笑った。

「もちろん。芽依の聞きたいこと、全部答える」

面会時間が許す限り、
芽依はたくさん質問をした。

フルネーム。
誕生日。
好きな食べ物、嫌いなもの。
高校での過ごし方。

「そうなんだ笑」
「ん、それでさ···」

そんなやりとりを重ねるたびに、
少しずつ、病室の空気がやわらいでいく。

話は尽きなくて、
時間が足りないと感じるほどだった。

佑陽は芽依の表情を見ながら、ふと考える。

(ハルのことは、まだ言わない方がいいよな)
モデルとしての名前。
雑誌に載る自分。
“佑陽”とは別の顔。
一瞬、話そうとしたけれど···
今の芽依には、情報が多すぎる。

(今は。俺を“佑陽”として知ってもらえれば、それでいい)
そう思って、佑陽はその話題を胸にしまった。