秘密な恋愛

芽依はどこか困ったような表情。
「そんな顔すんなよ、笑。つうか芽依、中学ん時もさ、すぐ感情顔に出てたよな。笑」

「えっ?!」

拓海は芽依を元気づけようと、
わざと話を切り替える。

「ほら、あの時もさ」
過去の話に、先程まで落ち込んでいた芽依も、
少しずつ表情がゆるんでいく。

「そんな事あったね笑」

“ふふっ”と声を出して笑う芽依。



その頃。
佑陽は病室へ続く廊下を、足早に歩いていた。

(仕事、早く終わって良かった···)
今日は少しでも長く芽依のそばにいたい。
そう思って、自然と歩幅が大きくなる。

病室の前に立ち、ノックをしようとした、
その時。

「ふふっ笑」
中から聞こえた、芽依の笑い声。

(笑ってる?)

一瞬、胸の奥がふわっと温かくなる。
芽依が笑ってる。
それだけで、救われる。 ···のに。

「な?それでさ」
次に聞こえてきた声で、佑陽の表情は変わった。

(拓海?)

「ふふっ、笑」
また聞こえる芽依の楽しそうな声。

トン···と、
佑陽は壁に肩を預けた。

(よかった)
芽依が笑ってくれてる。
それは、間違いなく嬉しい。
嬉しいはずなのに。

拓海の前で、自然に笑う芽依の声を聞くたびに、胸の奥がきゅっと締めつけられていく。

(俺の前じゃ、芽依はまだ···)

俺の前では、笑うより先に泣いてしまう。
俺を見た瞬間、困った顔をする。

(なんで···。俺じゃ、ダメなのかよ)
そんなこと思いたくないのに。

(拓海のことは、覚えてんだな···)