秘密な恋愛

夕方。
芽依は病室で佑陽を待っていた。

その時
静かにドアが開く。

(佑陽くんかな?)
そう思って、ふと顔を上げた瞬間

ギュ···
胸が締め付けられる。

「拓海··くん?」

病室へ入ってきたのは、拓海だった。
拓海は、目を覚ましている芽依の姿を見た瞬間、
ほっとしたように肩の力を抜く。

「よかった···」
芽依には聞こえないくらいの、小さな声。

「芽依、目···覚ましたって聞いたから」
そう言いながら拓海は、
手にしていた袋を差し出した。

「これ、食べられたら」
中には、フルーツゼリーがいくつか入っていた。

「ありがと··」
どこかぎこちなく返事する芽依。

拓海はゆっくり椅子に腰掛け

深く息を吐いたあと
ゆっくりと芽依へと視線を向け

「記憶。ないって聞いたんだけど··。つうか起きてて平気なのか?」

「うん、大丈夫。···拓海くんのことは覚えてるよ?」

自分を覚えてる、と聞きどこか
拓海は安心した表情をする。


「そっか。なぁ芽依。あんまり思い出したくないだろうけど。事故の事、覚えてるのか?」

それを聞き、
ドク··と鼓動がなる。

「···ううん。覚えてない。でも、拓海くんが助けてくれたっては聞いたよ?···ありがとう」

芽依に礼を言われるも、
どこか煮え切らない表情の拓海。


「そのことなんだけどさ。···あの時。もし俺が、芽依に声かけてなかったら。···もしかしたら、芽依助かってたかもしれない」


申し訳なさそうに
呟く拓海。

それを聞き、芽依は
黙り込むが···

(そうかも··知れないけれど···)

「でも、助けてくれたよ?拓海くん。それに、ぼーとしてた私が悪いよ···」

どこか困った表情で
ふと笑う芽依。


(あいつの言う通りだな···)

ふと佑陽の言葉を思い出す。

“傷ついた側なのに、芽依は相手を悪者にすることができない”

「優しすぎだろ、芽依··」