秘密な恋愛

「芽依、今日そっち行くの少し遅くなるかもしれねぇ」

「あっ··。うん、わかった」

芽依がそう返した瞬間、
電話の向こうで、ふっと息を吐く音がした。

『頑張れる、今日』

「え?」

芽依が聞き返すと、佑陽は少しだけ笑う。

『芽依の声、聞けたから』

「···っ」
胸の奥が、きゅっと鳴る。
たったそれだけの言葉なのに、
どうしてこんなに苦しくなるんだろう。


「佑陽くん、疲れてるの?」

『ちょっとな』
即答。
でもその声は、どこか安心してるみたいで。

『でも、芽依が“おはよう”って言ってくれて』

一瞬、言葉が止まる。

『俺、今日ちゃんと頑張れる』

「····」
芽依は、返事ができなかった。
喉の奥が、熱くなって。

(私の言葉が、支えてるの?)


『芽依?』

「うん··頑張って」
そう言った芽依の声は、
自分でも驚くほど優しかった。

電話の向こうで、佑陽がふっと息を吐いてから、
『 芽依も、無理すんなよ』

「···うん」

『俺が行くまで、待ってて』

芽依の頬が熱くなる。
「ん··」

“待ってるね”
なんて緊張する芽依は言えなく、
頷くのがいっぱいだった。

『じゃ、あとでな 』

通話が切れて、画面が暗くなる。
芽依はスマホを胸に抱えたまま、
しばらく動けなかった。
(なんでこんなに···会いたいって思うの··)