秘密な恋愛

「ねぇ、佑陽くん?」
「はい··?」

芽依のママは少し迷って、
それでも覚悟を決めたように言った。


「今は、佑陽くんのこと···芽依の記憶にないかもしれない。もしかしたら、もう戻らない可能性だってあるの」


佑陽の指先が、ぴくりと揺れる。

芽依のママは佑陽の手を、
きゅっと握り

「それでも」
息を吸って、ゆっくり言葉を続ける。

「芽依の傍に、いてあげてほしいの」
「え···?」

思いもしなかった言葉に、佑陽は目を見開いた。


「なんで···そんなこと言うんですか」


芽依のママは、ほんの少しだけ笑って。
でもその笑顔は泣きそうだった。

「芽依ね」
芽依のママは、
そっと芽依の方へ視線を向ける。

「佑陽くんの話をしてる芽依が、本当に幸せそうだったから。さっきもね。佑陽くんが病室を出ていった時、芽依···悲しそうな顔してたのよ」


(芽依が?)

信じられないような気持ちと、
胸の奥が熱くなる感覚が同時に押し寄せる。


芽依のママは、佑陽の手を優しく握りしめた。

「記憶がなくても、心が覚えてるんだと思うの」

(芽依···)


「だからね」
芽依のママは、静かに、
でも確信を込めて言う。

「きっと、芽依はまた。佑陽くんを好きになるわ」

その瞬間。
芽依の前で堪えていた涙が、ふと落ちた。

「大丈夫です」

佑陽は震える声で、それでも言い切った。

「芽依さんの傍にいます。俺···」

芽依のママが、ふっと息を吐く。
「ありがとう」