秘密な恋愛

「芽依ちゃん、佑陽のこと忘れてても···佑陽の声は、忘れてねぇかもしれない」

佑陽が顔を上げる。
「声?」


「うん。起きる直前、芽依ちゃんなんて言ってた?」
佑陽は息を呑む。
あの掠れた声。
“泣かないで”

「“泣かないで”って···」
翔多は小さく頷いた。

「それ、たぶん佑陽のことだろ」
「···」

「夢の中でずっと呼ばれてて、それが残ってたから、そう言ったんだろ? 」

佑陽の目がまた滲む。

翔多は佑陽の肩を叩いて、
少しだけ笑う。

「記憶がなくなったならさ、
もう一回好きになってもらえばいいだろ」

「···っ」

「佑陽、モデルの仕事だとさ、何回でも“落とす側”だろ?お前得意じゃん」

「···うるせぇ」
鼻をすすりながら、
佑陽が苦しそうに笑った。

翔多は続ける。
「芽依ちゃんのこと、好きになったのはお前だろ」

「···」

「芽依ちゃんが佑陽を好きになったのも、ちゃんと理由がある」
翔多の声が少し真剣になる。

「その理由はな、記憶が消えたぐらいじゃ消えねぇよ」

震える手をキュッと握る佑陽。