今宵、シンデレラのベールの秘密。

首を小さくかしげながら何度も念を押すように聞いてくると、安心したのか、睡魔が襲ってきたのか俺の肩に頭をを預けるとすやすやと寝てしまった。


俺だって男という部類なのだ。


こんな無防備に寝てしまわれると困る。


幸せそうな寝顔を見ると気を紛らわすように外の月を眺めた。


起こさないようにそっと持ち上げると床に座らせて持っていたブレザーをかけた。相変わらず、頭を預けたまま熟睡している天寧を見る。


――……可愛い。


叶わないはずの俺の初恋。


ここで再会してしまったら、諦めれなくなる。


ずっと、俺の横で笑っていてほしい。ずっと、一緒にいたい。


そんな気持ちばかりが募って押しつぶされそうになるから。


――好きだ。誰よりも。


そっと心の奥に秘めておくつもりだったのに。


天寧の傍を離れた日から天寧を忘れることなんて一度もなかった。


毎日のように天寧を想っては目の前の雑魚ばかり相手にしてきた。


全ては天寧に笑っていてほしいと願っているから。


それが俺の隣じゃなかったとしても。他の誰かの物になったとしても。


天寧にとって、今の俺は見ず知らずの他人なんだ。


予備の存在であり、他人。


静かに想いが消えていくのを待つしかない。


いや、消えてくれないのは目に見えている。


俺の中で天寧がどれだけ大きい存在か、俺は知っているから。


――「やぁ黒崎くん。久しぶりだね」


静かに教室のドアが開くとそこに立っていたのは、一番会いたくなくて嫌いな男。


「………」


「おー無視とはなんだか燃えるね。ねぇ、その子貸してくれない?」


横目で天寧を見ながらにやりと笑う翔。


誰が貸すか。


「その子、漣の子じゃないよね?」


………。


「仮にも俺の子なんだよね。あくまで、キミは予備。まぁ予備にすらならないかも、だけどね」


言い返せないのが辛い。


この男だけには渡したくなかった。絶対に。


俺の隙を見計らった翔が天寧を抱き上げた。


「おい」


「じゃあ、あとよろしくねー」


軽い声で誰かにそう呼びかけるような仕草をしたと思えばドアの陰からざっと二十人くらい飛び出してきた。


………っ。


とりあえず、ここを交わすしか…――。