「……婚約が上手くいかなかった?」
「……はい。申し訳ありません。ですから……」
――「婚約させろ。あいつにはそれくらいしかできないんだ。それなのに、婚約も駄目になっただと!?」
革で出来たソファに座って怒鳴り散らす男とひたすらに頭を下げるばかりの少女。
彼女のただ黒に染まった瞳が男を映している。
昔から自分の気持ちも押し殺し生きてきた彼女にとってこんな怒鳴りは怒りのうちにも入らないのかもしれない。
「それには…事情がありまして……」
「事情などどうでもいい!ただ婚約させるだけだ!」
「申し訳ありません。しかし……」
「……お前まで口答えするのか」



