日曜の昼下がり。
あやめはソファで学校のプリントを整理していた。

そこへ二男・陽太がキッチンから顔を出す。

「お嬢様〜、ジュースいるか?」

「うん、欲しい!」

陽太はツンとした顔でグラスを持ってきた。

「ほら。こぼすなよ?」

「ありがと、陽太。優しいね」

その瞬間。

陽太はコップを持ったまま固まった。

「……べ、別に普通だろ! 変なこと言うな!」

(あ、照れてる……かわいい……)

そんな微笑ましい空気の直後だった。

玄関のインターホンが鳴り、
あやめのクラスメイトの男子がプリントを届けに来たのだ。

「朝比奈、これ先生が配れって」

「えっ、わざわざありがとう!」

外で少し会話していると

背後から明らかに不機嫌な気配が近づく。

「……おい」

ドアの隙間から陽太がこちらをじーーっと見ていた。

男子が帰ったあと、陽太は腕を組んだまま言った。

「誰、あいつ?」

「え、クラスの子だよ?」

「へぇ。……なんで笑ってんの?」

「え……笑ってた?」

「笑ってた」

陽太は眉を寄せて、あきらかに不機嫌。

(……これ、もしかして……嫉妬?)

あやめが様子を見ていると、陽太はそっぽを向いた。

「別に気にしてねぇし。……ただ、なんかムカついただけ」

「ムカつくって……どうして?」

陽太の耳が赤くなる。

「……知らねぇよ。お前が他の男と話してると……なんか、落ち着かねぇんだよ」

胸がぎゅっとつまる。

体育会系で男らしくて、
いつも元気で、
ちょっと乱暴だけど優しい陽太が。

そんな顔でそんなことを言うなんて。

「あやめは、俺の……」

「え?」

陽太は言いかけて、パッと目をそらした。

「……なんでもねぇ!」

そのままキッチンに逃げていく。

(陽太……かわいすぎる……)