温泉からあがると、
体がぽかぽかして、頬がずっと熱かった。
(やばい……混浴なんて心臓がもたない……)
美桜は売店に行くと言い残し、
他の兄弟たちはそれぞれ館内のチェックに散っていった。
ふらふらと部屋に戻ると
襖がスッと開いた。
「おかえり、あやめちゃん」
五男・優真だった。
いつものゆるい雰囲気のまま、
浴衣姿でちょこんと座っている。
(……かわいいけど、なんか色っぽい……)
濡れた髪が肩にかかって、
浴衣の胸元が少しだけ緩んでいて、
さっきまで湯船で見た年下っぽさより
ずっと大人に見えた。
「のぼせてない? 顔すごく赤いよ」
「えっ!? あ……これは、その……湯気が……」
優真がくすっと笑う。
「混浴、すっごく恥ずかしかったでしょ?
あやめちゃん、ずっと視線泳いでたもん」
「み、見てたの……?」
「見てたよ。かわいかったから」
胸が跳ねた。
優真は立ち上がると、
タオルを手に取り、そっとあやめの髪に触れる。
「髪、まだ濡れてる。風邪ひくよ。
拭いてあげるね」
「い、いいよ自分で……」
「だめ。今日は休む日なんだから」
優真の指が髪をすべらせ、
水滴をふき取るたびに
くすぐったいような、甘い気持ちになる。
距離は近くて、
湯上がりの体温がほんのり伝わってくる。
「ねぇ、あやめちゃん」
「……なに?」
「今日の混浴でね、ちょっと思ったの」
「え、なに……?」
優真は真面目な顔になり、
あやめの髪をそっと耳にかけた。
「みんなの前にいる時のあやめちゃんより、
ぼくの前にいるあやめちゃんのほうが……ずっと可愛い」
「っ……!」
優真は続ける。
「緊張したり、目そらしたり、恥ずかしそうに笑ったり……
そういうの、全部ぼくが独り占めできたらいいなって」
距離がさらに近づく。
布団の灯りだけの薄暗い部屋で、
優真の瞳の“甘い色”がよく見える。
あやめは声が震える。
「ゆ、優真……そんなこと言われたら……」
「困る?」
「……困る、けど……うれしい……」
優真ははにかむように微笑んだ。
「じゃあ、もう少しだけ甘えていい?」
「……な、なにを?」
優真はあやめの肩をそっと包んだ。
ぎゅっ。
胸の鼓動が、一気に早くなる。
「怖かったでしょ。昨日も、今日も。
でも、ぼくたちは絶対にあやめちゃんを守るから。
……ぼくも、その一人だよ」
「……ありがとう……優真」
耳元でささやく声は、
温泉よりもずっとあたたかかった。
優真は少し離れ、
わざと拗ねたように言う。
「ねぇ。今日はぼくと一緒にいたいって……
思ってくれたりする?」
そんなこと聞かれたら…
「……思ってるよ」
優真はふわっと嬉しそうに笑った。
「じゃあ、しばらくここにいて」
体がぽかぽかして、頬がずっと熱かった。
(やばい……混浴なんて心臓がもたない……)
美桜は売店に行くと言い残し、
他の兄弟たちはそれぞれ館内のチェックに散っていった。
ふらふらと部屋に戻ると
襖がスッと開いた。
「おかえり、あやめちゃん」
五男・優真だった。
いつものゆるい雰囲気のまま、
浴衣姿でちょこんと座っている。
(……かわいいけど、なんか色っぽい……)
濡れた髪が肩にかかって、
浴衣の胸元が少しだけ緩んでいて、
さっきまで湯船で見た年下っぽさより
ずっと大人に見えた。
「のぼせてない? 顔すごく赤いよ」
「えっ!? あ……これは、その……湯気が……」
優真がくすっと笑う。
「混浴、すっごく恥ずかしかったでしょ?
あやめちゃん、ずっと視線泳いでたもん」
「み、見てたの……?」
「見てたよ。かわいかったから」
胸が跳ねた。
優真は立ち上がると、
タオルを手に取り、そっとあやめの髪に触れる。
「髪、まだ濡れてる。風邪ひくよ。
拭いてあげるね」
「い、いいよ自分で……」
「だめ。今日は休む日なんだから」
優真の指が髪をすべらせ、
水滴をふき取るたびに
くすぐったいような、甘い気持ちになる。
距離は近くて、
湯上がりの体温がほんのり伝わってくる。
「ねぇ、あやめちゃん」
「……なに?」
「今日の混浴でね、ちょっと思ったの」
「え、なに……?」
優真は真面目な顔になり、
あやめの髪をそっと耳にかけた。
「みんなの前にいる時のあやめちゃんより、
ぼくの前にいるあやめちゃんのほうが……ずっと可愛い」
「っ……!」
優真は続ける。
「緊張したり、目そらしたり、恥ずかしそうに笑ったり……
そういうの、全部ぼくが独り占めできたらいいなって」
距離がさらに近づく。
布団の灯りだけの薄暗い部屋で、
優真の瞳の“甘い色”がよく見える。
あやめは声が震える。
「ゆ、優真……そんなこと言われたら……」
「困る?」
「……困る、けど……うれしい……」
優真ははにかむように微笑んだ。
「じゃあ、もう少しだけ甘えていい?」
「……な、なにを?」
優真はあやめの肩をそっと包んだ。
ぎゅっ。
胸の鼓動が、一気に早くなる。
「怖かったでしょ。昨日も、今日も。
でも、ぼくたちは絶対にあやめちゃんを守るから。
……ぼくも、その一人だよ」
「……ありがとう……優真」
耳元でささやく声は、
温泉よりもずっとあたたかかった。
優真は少し離れ、
わざと拗ねたように言う。
「ねぇ。今日はぼくと一緒にいたいって……
思ってくれたりする?」
そんなこと聞かれたら…
「……思ってるよ」
優真はふわっと嬉しそうに笑った。
「じゃあ、しばらくここにいて」

