「わーっ!また、たまご焦がしちゃった!」
キッチンから、気の抜けるような声がした。
その声は、ドラマの中で熱い言葉で犯人を説得しているカノン……じゃなくて。
キッチンでごはんを作っている私のママのものだ。
「ママ、だいじょうぶー?」
「もちろん!ケチャップで焦げたところをかくしたら、問題ナシよ!」
ママは、グーサインを返してくるけど、問題しかないような……。
私のママ、東雲玲奈(しののめれいな)は、天才女優って呼ばれてる。
だけど、家でのママは失敗ばかり。
画面の中のカノンとは、別人みたい。
『一人で勝手に死ぬなんて許さない!傷付けた人の分だけ、生きて反省しなさい!』
ビルから落ちそうになった犯人を引き上げたママは、犯人にそう言い放つ。
がっくりとうなだれた犯人は、ママに完全敗北って感じ。


