「おっ、姉ちゃん行くの?」
「泣いてる子どもは、ほうっておけないでしょ……」
とか言って、ノープランなんだけどね。
心臓がドクドクと脈打っている。
一歩足を踏み出すと、きんちょうで頭が真っ白になる。
「や、やっぱり知らない子供に話しかけるなんて……」
おくびょうで、きんちょうしいな私には、無理だ。
そう思ってアオをふりかえった時、
「やっぱり、“姉ちゃん”にはむずかしいみたいだね」
アオは、そうつぶやいたかと思えば、
「エチュード。"カメレオンレッド”」
パンッ!と手をたたいた。
その瞬間、パッと目の前の景色の見え方が変わる。
私の胸の不安はすっと消え去り、代わりに強い“使命感”で満ちていた。
『泣くな、少年!』
さっそうと駆け出した私は、子どもたちの前でおなじみのポーズを決める。
『悪しきを打ち砕き、幸せ色に染め変える。カメレオンレッド見参!』
とつぜん叫んだ私に、子どもたちはポカンと口を開けてあっけにとられていた。
さっきまで泣いていた男の子の手には、カメレオンレッドの人形がにぎられている。
『その人形、さては、君はわたしのファンだな?』
「わたしって……。もしかしておねえちゃん、カメレオンレッドなの……?」
男の子はまだ信じていないのか、けげんな顔だ。
私はメガネをずらすと、
「わたしに変身能力があるのは、知っているだろう?今は、極秘任務の最中でね。わけあって、少女のすがたに変身しているんだ」
パチンと、カメレオンレッドが得意なウインクをする。
そのしぐさで、ようやくピンときたのか、


