「それじゃあ、あたしはアクセルのメンバーに会ってくるから!持ってて、タイガ様!」
そう言ってルミ子は、一度も振り返ることなくその場をあとにした。
嵐みたいな子だ……。
さわがしいルミ子がいなくなると、とたんに辺りは静まり返った。
「ルミ子さんに着いて行かなくていいの?」
「え?うん。お昼ごはん作らなきゃだし。おなか減ってるんでしょ?」
「べつに。あれは、口実だよ。姉ちゃんが行きたいなら、行ってくれば?」
……人気アイドルのライブ。
気にならないと言えば、うそになるけど、
「チケットないし、いいよ。洗濯物取り込んで、夕飯のハンバーグの仕込みもしなきゃだし」
地味で平凡な私には、キラキラした芸能界なんて縁がない。
ただ平穏に、日々の暮らしを送ることができたらそれでいい。
春風が髪をゆらして、思わず鼻歌を歌いたくなるくらいのいい天気だ。
見上げれば、桜の木がつぼみを付けている。
「……姉ちゃんは」
何か言いたげな顔のアオが口を開きかけた時、


