崖っぷち女子は屋上で拾ってくれた年下上司とスイーツ革命中

翌日。

朝から夕方まで何度も頭を下げ、デザイン修正や閉店セール対応の資料作りに追われる。
5時過ぎ、周りのデザイナーが次々と帰る支度を始めても、私はひたすら電話とキーボードを叩いていた。

「細かい仕様は今お送りしました……はい、ありがとうございます、助かります!」
スマホを置いた瞬間、トントン。
肩に触れる指の感覚。

ほっぺを軽くつつかれ、思わず目を見開く。

「あっ……」

(ヤマさん……意外と古いイタズラするんだ……)

「定時ですよ。帰る時間です」
「まだ全然終わってないんですけど……」

「倒産する会社で残業しても意味ないって、外部さんも理解してますよ」
その声に、ふっと力が抜ける。


横で後輩デザイナーの押尾ミクちゃんがニヤニヤしながら私を見つめる。

「じゃ、5分後に玄関で待ってますんで」
大山さんは何も言わず、さっさと去ってしまった。

「ええええ……」
ミクちゃんが私のカバンを押しつけるように手渡す。

「先輩、行った方がいいですって!!電源とか私が切っときますから!」

「ミクちゃん……ありがとう……!」

半ば押し出されるように、一階へ向かう。

昨日のあの光景が頭によぎって、階段を降りる足が少し重かった。

◆ ◆ ◆
「ここ……どこですか……?」
会社から歩いて数分とは思えない。

目の前に広がるのは、見たことのない絶景。

雑居ビルの十階の、夜空と夜景を背景にした屋上カフェだった。


星型やハート型のネオンサインが淡く輝き、三角テントの奥には透明ドーム。
中ではソファに座ったカップルや親子連れが、パフェをつつきながらくつろいでいた。
まるで魔法使いが夢を現実にしたみたいだ。

「少々お待ちください。席が空き次第ご案内しますね」
待合席に通され、息を呑む。
「待って大丈夫ですか?」と大山さん。
「むしろ待ちたいです……最高すぎます!!何ですか、このレトロサイケ天国」

辺り一面をスマホに収めたくて、私は写真を撮ることに夢中になった。
「絶対、シマさん好みだと思ったんですよ」
思わず振り返る。
クールな声でそう言う大山さんの口元に、わずかに柔らかさが見える。

「なんでこんな場所を知ってるんですか!?」
「似合わないのわかってるんですけど
 ……本当は、こういうゆめかわ女子っぽいの、好きで」
(意外すぎる……でも、だからうちの女子アパレルにいるのかな)
「インスタで見て、会社近いし、一回来てみたくて」
「ヤマさんって……もしかしてプレス向きだったんじゃ……」
「バレました?部署異動願い出してたんですけど、ダメでした」
「え——!!ヤマさん絶対向いてるのに!!」
思わず声を上げると、大山さんは目を丸くし、
頬に手を当てて少し恥ずかしそうに俯いた。
普段クールな彼とのギャップに、少し胸がくすぐったくなる。