崖っぷち女子は屋上で拾ってくれた年下上司とスイーツ革命中

「今日の朝礼、会長が来るらしいよ」

「絶対なんかあるって」

朝恒例の掃除を終えた後、社内中が騒ついていた。
不安の熱がフロアに充満する。
私もその波に押されるように朝礼場へ向かった。

 そして、室内に響いた専務の声は、驚くほど静かだった。

「……半年後、会社は倒産します」

ひと呼吸のあと、空気が真空のようにしんと固まる。
「給料は半年間、全額支払います。ただし、その間に事後対応と就職活動を進めてください」

椅子に崩れ落ちる音。すすり泣き。
十年、二十年働いた人たちが、現実を受け止めきれず膝を抱えていた。

 でも──時間は止まらなかった。
午前十時。
電話は容赦なく鳴り続ける。
(倒産するのに……仕事は、普通に、進むんだ……)
生産ライン。発注済みの新商品。大手とのコラボ案件。そして謝罪。
本来なら止めなくちゃいけないのに、目の前には“今日やるべき仕事”が積み上がっている。

◆ ◆ ◆
「この度はせっかくのお話でしたのに、本当に申し訳ありません!」
この一週間、私は何度、頭を下げただろう。

「いえ、御社の事情は十分理解しています。
 デザインは少し変更して出しますよ。
 データは購入済なので、使わせてもらいます」
「本当に……ありがとうございます!」

エレベーター前まで見送ると、担当者が私の手をぎゅっと握った。
「大島さん。あなたみたいなデザイナーが仕事を失うなんて……もったいないですよ」
「ありがとうございます……!」
必死に笑って見送る。


時計を見ると、もう正午を回っていた。
(……お昼ご飯なんて無理)
胃がぎゅっと縮む。
少し風に当たりたくて、私はエレベーターで屋上へ向かった。