崖っぷち女子は屋上で拾ってくれた年下上司とスイーツ革命中


◆ ◆ ◆

車は郊外へ向かい、森の中の緩やかな坂道をゆっくり登っていく。

窓の外の木々の間から、柔らかな春の光が差し込む。

私は小さく息を吐いた。
(こんなふうに一緒に移動するだけで、心臓が騒ぐなんて……)
目的地に着くと、そこは展望台のある小さな高台だった。

静かで、風が心地よい。
「ここ、シマさん好きかなと思って……」

少し照れくさそうに大山さんが言う。
「……すごい。景色、きれい……」

眼下に広がる街並み、淡い春の光、全部がキラキラと輝いて見える。

大山さんの声がそっと耳に届く。


「誕生日おめでとうございます。昨日言えなかったので、言わせてください」
柔らかい声に、自然と笑顔が溢れる。

「本当にありがとうございます!」


風に揺れるマフラーを、彼がそっと手で整えてくれた。


「昨日……誰かに先を越されたみたいで、落ち着かなかったんです」

ふいに目が合う。

一瞬、大山さんの指先が頬に触れた気がした。
「シマさんって……いつもみんなに優しいから、人からも大事にされるタイプですよね」
(そんな風に思ったこと、一度もないけど……)
見渡すと、展望台には小さなカフェがあり、外席にはハンモックも置かれている。
壁一面のガラスからは、街と空の光景が広がる。
運ばれてきたのは、雲の形をしたケーキ。
小さなろうそくが立てられていて、
大山さんは小さな声で「おめでとうございます」と言った。

「ありがとうございます!!雲のケーキ、かわいいですね!!」
リアは自然に笑顔をこぼす。
「よかったです」
あえて、派手じゃなくしてくれたことに気遣いを感じて嬉しかった。
ケーキを写真に収めるニット姿も可愛らしく、思わず見惚れてしまう。
(次いつ、こんな私服姿が見れるかわからないし……)
ケーキを平らげ、コーヒーを飲みながら、二人で静かに景色を楽しむ。
しばらく沈黙が続く。
互いの存在だけが、風の音と景色の間にある。
「……本当に聞きたいんですけど」
大山さんが少し迷いながら口を開く。
「はい」
「シマさんって、割といろんな男と出かけるタイプなんですか?」
真剣な瞳に見つめられ、思わず吹き出しそうになる。

「全然違いますよ。仕事や趣味の延長で行くことはありますけど」
大山さんはふっと息を吐き、言葉を探すように目を逸らす。
「よかった……じゃなくて……えっと……」

彼は照れくさそうに言葉を失って、ソワソワしていた。
「あれ、じゃあ俺とも、そうですか?」
小さく笑いながら答える。
「かなりデザインのお勉強させていただいてます」
「そう……ですか」
少し複雑な表情で見つめられる。
まるで子犬がおやつを取られてしゅんとしてるような目。


「でも、今、それが何よりも本当に楽しいんです!

 自分が一番好きなものとたくさん出会えますし」

私は慌てて弁解しながら、頬が自然に上気する。
「今日、本当に嬉しかったんですよ。
 まさか、ヤマさんがお祝いしてくださるなんて、最高でした!」
大山さんは耳まで赤くして、ゆっくりと笑みを返す。
「……笑顔が見れてよかったです」

静かな展望台に、二人だけの時間が優しく流れる。

胸の奥に、じんわりと温かいものが広がった。
(こんなふうに祝われる誕生日……、幸せすぎる……)
二人の視線が重なり、風と光に包まれながら、小さく息をついた。

明日もまた、こんな気持ちで過ごせたらいい――そう心の奥で願う。