季節は巡り、隣のあなたはいつでも美しい

 僕、須藤藤也は家の庭にある納屋でじいちゃんのお仕事を眺めていた。


「なにしてるの?」

「はさみ砥いでるんだよ。お前の親父に『いい加減、自分のはさみは自分で砥げ!』って怒られちまって」

「とぐとどうなるの?」

「よく切れるようになる」

「ぼくの、ようちえんのはさみも?」

「藤也のはステンレスだから、わかんねえなあ」


 じいちゃんは笑いながら、はさみや、他の尖ったものたちを砥いでた。


「じいちゃん、あれなに?」


 僕は納屋の隅の棚を指差した。

 一番上に赤と緑の袋が置いてある。


「あれは桐子さん……藤也のばあちゃんへのクリスマスプレゼント」

「ふうん。なにがはいってるの?」

「ハンドクリームとボディクリーム。いい匂いがするやつ」

「ばあちゃんも、だいどころのたなに、じいちゃんへのプレゼントおいてた」

「桐子さんは昔からそこに隠してるな」


 じいちゃんは嬉しそうに、研いだピカピカをひっくり返した。


「なかみみて、おこられたりしない?」

「しない。桐子さんが渡してくれるから嬉しいんじゃねえか」

「ふうん」

「この歳になると、お互い中身なんて分かってるけどな。それでも桐子さんが俺のために用意してくれたことが嬉しいんだよ」

「そうなの」


 よくわからないけど、じいちゃんがニコニコだから、まあいいか。


 今日は暖かくて日差しがポカポカしていた。

 上着もいらないし、納屋の中は日が差してキラキラしていた。


「あったかいねえ。はるになった?」

「まだだなあ。こういう冬にふいに暖かくなることを小春日和って言うんだよ」

「じいちゃんとおなじだ」

「おう。俺は冬生まれだからな」

「ばあちゃんが、じいちゃんのなまえすきっていってた」

「そりゃ嬉しいねえ」

「うれしい?」

「嬉しいさ。桐子さんが名前を呼んでくれるだけで、俺は嬉しいよ」


 砥ぐのが終わって、じいちゃんは納屋を片付け始めた。


「刃物は危ないから触るなよ」

「ぼくにも、はさみちょうだいよ」

「藤也がうちを継ぐ気になったらな」


 うちを継ぐってなんだろう。

 じいちゃんやばあちゃん、父さんと母さんと一緒にお花屋さんや木の世話をすることだろうか。


「ぼくもするから、はさみちょうだい」

「お、そうか? じゃあ藤也の母さんにはさみをもらっていいか聞いておいで。いいって言われたら、じいちゃんが選んでやるから」

「わかった!」

 僕は納屋を飛び出した。

 ちょっと走ったら汗が出るくらい、外は暖かい。