季節は巡り、隣のあなたはいつでも美しい

 夕方、俺、由紀瑞希が仕事を終えて家に帰ったら、先に帰っていた親父が風呂から出て来たところだった。


「おかえり、瑞希。女連中が楽しそうなことやってるから、早く風呂行ってこいよ」

「楽しそうなこと?」

「身奇麗にしてからのお楽しみ、だな」


 なんだそりゃ。

 とりあえず手洗いうがいをして、風呂を済ませてからダイニングに向かったら、テーブルにケーキが並んでいた。


「おお、すげえな……」


 クリスマスのブッシュドノエルだ。

 それも三本。


「え、なに、買ってきたの?」

「作りました」

「つくいました!」


 妻の澪と二歳の娘の花菜がニコニコしながら答えた。お袋まで同じようにニコニコしている。


「三人でそれぞれデコレーションしたのよ。どれが誰かわかる?」

「ピンクが花菜、白が澪、茶色がお袋」

「あら、わかるのね。お父さんも一発で当てたし、面白くないわ」

「いや、わかるだろ」


 なにしろピンクのブッシュドノエルはあっちこっちにクリームが飛び散っている。

 茶色のは小奇麗でさっぱりしていて、白いのは大量にイチゴが載っていた。


「晩ごはんの後に食べましょうね。ごはんもねえ、澪ちゃんがすごいの作ってくれたから」

「しゅごいよ」

「澪の飯ですごくなかったことなんかねえよ」

「あらー、お父さん見習って?」

「はいはい、お前さんの飯が一番美味えよ」


 晩飯は確かにすごかった。

 ビーフシチューとガーリックトースト、ローストチキンとサラダにナポリタンまである。


「鶏一匹はさすがにでけえなあ」

「かなもたべる」

「どうぞ。かたかったらスパゲッティ食べてね」

「あい!」


 あんなにあった飯はみんなで食べたらあっという間になくなった。


「澪は食った?」

「いただきましたよ。……多少」

「ちゃんと食えよ」

「作ってると、それだけでお腹いっぱいになっちゃうんですよね。中で暴れてますし」

「そうだよなあ。片付けは俺がするから座っとけよ」


 親父と花菜はテレビを見ていて、お袋は風呂に行ったらしい。

 俺は一人で台所を片付けて、ケーキ用の皿を並べる。


「澪はどれ食うんだ」

「お義母さんが作ってくれたチョコレートのが食べたいです。チョコレートクリームが苦くて美味しいんですよ」

「へー、俺も食べよ」

「かな、ぴんくの!」

「切り分けるから待ってろ」

「花菜ちゃん、じいちゃんにもピンクの分けてくれ」

「いいよ、ちょっとね」

「ちょっとかあ」


 花菜と親父、お袋もやってきてそれぞれケーキを取り分けた。

 ケーキは少し残って、花菜の明日のオヤツになるらしい。


「瑞希さん、足りましたか?」

「うん。うまかった。ありがと」

「足りなければ来年は一人一本用意しますよ」

「恵方巻じゃねえんだから。あれば食うけどさ」

「わかりました」


 澪はニコッと笑って、花菜を連れて風呂に向かった。

 ケーキの片付けは親父に任せて、俺はタブレットを出してきて明日の仕事を確認する。

 クリスマスが終われば少しは落ち着く。そしたら従姉妹を呼んでクリスマスプレゼントのプリンセスの衣装を着せて写真でも撮ろう。

 子どもたちがケーキやプレゼントにはしゃいでいるのは見ていて楽しいから。

 妻も、いつもより楽しそうでかわいいし。