季節は巡り、隣のあなたはいつでも美しい

 畑の隅で焚火をしていたら、妹の息子の藤也がやってきた。


「みずき、それなに?」

「焚火」

「おいも?」

「焼いてねえけど、焼きたいなら澪に芋もらってこい」

「みおちゃん、かなちゃんたちとねてた」


 藤也はそう言って俺の隣に座り込んだ。

 焚火はパチパチと音を立てて、細い煙が薄青い空に登っていく。


「みずき、みおちゃんちょうだいよ」

「やらねえ」

「ぼくが、おとなになったらでいいから」

「俺が死んでもやらねえ」

「ぶー」


 ふくれた頬は幼い頃の妹そっくりで、突いたら手で払われた。


「澪が、俺よりお前の方がいいって言うくらい、お前がいい男になったら考えてやるよ」

「……なるかなあ」

「ならねえだろうなあ」

「みずきのばか」

「人妻じゃなくて、誰のものでもない、お前のことだけを好きになる相手を探せよ」

「いるかなあ」

「いるだろ」


 焚火をときどきかき混ぜて空気を送った。

 落ち葉も枯れ枝もいくらでもある。


「……りひとも、そんなこといってた」

「言いそうなこった。お前の親父は何て言ってた?」


 聞くと藤也は俯いたまま小さく唸った。


「なんにも」

「まあ、言わないか。あいつは」

「とうさんは、かあさんだけだから」

「そうだなあ。それにお前だって、親父にしないだろ、そういう話」

「はずかしいよ」

「そんなもんだろ。親に女の話なんかしねえよ」

「ぼく、おとなになった?」

「まだまだ。親父よりでかくなったら大人だな」

「なるかな」

「なる」


 火かき棒から手を離して、焚火を見ている藤也の頭をぐしゃぐしゃ撫でた。


「お前は親父の息子だけど、俺の甥だから。親父よりでかくなる」

「そっかあ」


 藤也がやっと顔を上げた。

 その向こうから妹の花音が走ってくる。


「おにーちゃーん、藤也ー! お芋とみかんもらってきた!」


 妹は四十近い三児の母のはずだけど、駆け寄る姿は幼い頃の俺の妹のままで、なんとなく切ない。

 たぶん焚火の煙の匂いとか、燻った空の色とか、そういうあれこれのせいなんだろう。


「芋、どんだけ焼く気だよ」

「お兄ちゃんと私と澪さんと、藤也と花菜ちゃんと桔花と蓮乃と、あとお父さんお母さん」

「澪も花菜も一本食わねえから」

「じゃあとうさんにおみやげする」

「そうしよう」


 妹が笑顔で焚火に芋をぶち込んだ。


「ばか、全部入れたら火が消えるだろ!」

「お兄ちゃん、なんとかしてよ」

「しゃあねえなあ……」

 うん。

 やっぱりこいつは俺のしょうもない妹で、一緒になってゲラゲラ笑う藤也は妹の子だった。