季節は巡り、隣のあなたはいつでも美しい

「みずきー、あめあげる。かなちゃんと、みおちゃんにも」

「お、サンキュ」


 俺、由紀瑞希が顔なじみの花屋に花の納品に行くと、甥の藤也が飴を三つくれた。

 ありがたく受け取ったら、幼馴染みの藤乃が花を数えながら顔を上げた。


「今日、幼稚園でクリスマス会だったんだよ」

「あー、それでもらってきたのか」

「うん! サンタさんきた」

「よかったじゃねえか」


 けど、藤也は不満そうに店のカウンターでリンゴをかじっている。


「でもねえ、トナカイいなかったんだよ」

「いねえだろ」

「なんで? トナカイにソリをひかせて、そらをとぶんでしょ? じゃあどうやって、ようちえんにきたの? トナカイは? ふぃんらんどでおるすばん?」

「待て待て」


 勢いよく聞かれて、思わず吹き出した。

 父親である藤乃は既に聞かれた後なのか、笑いながら手を動かしている。


「親父は何だって?」

「ようちえんにトナカイつれて、こられないから、ふぃんらんどでおるすばんだって」

「なんでフィンランド?」

「サンタクロースむらがあるって、ばあちゃんがいってた」


 藤乃を見たら頷いたから、たぶんそうなんだろう。

 ……大変だな、幼稚園のイベントのためにフィンランドからわざわざ。


「どうやってきたのかな。ぷれぜんともって、でんしゃのってきたの?」

「そうかもな」

「おおにもつだ」

「ほんとだよ。で、この飴をもらってきたのか」

「うん。いいこにはおかしくれるって。でもねえ、ぼく、サンタさんにはロズレ○ドがほしいっておねがいしたんだよ」


 なんか聞いたことあんな……あれだ、ポケモ○だ。


「ぬいぐるみ?」

「ううん。ほんもの」

「生き物は難しいんじゃねえかな。それにポケ○ンなら、自分で捕まえないと言うこと聞かねえだろ」

「そうかなあ」

「ちゃんと自分で見つけて捕まえて育てねえと」


 野生のロズレ○ドがその辺にいるかは知らねえけど。

 藤也は納得したんだか、してないんだか、頷いてりんごの続きを食べていた。


「きょう、サンタさんにおかしもらったけど、クリスマスもサンタさんくる?」

「いい子にしてればね」


 花をバケツに移しながら藤乃が言った。

 俺も娘の花菜に毎日言っているセリフだ。


「みずき、そのあめ、ちゃんとかなちゃんとみおちゃんにもあげてよ」

「わかったって、じゃあまたな」


 藤乃から受領書を受け取って店を出た。

 藤也が裏口で手を振っている。

 車に乗り込んでから、藤也がいい子でいるために俺と娘に飴を譲ったのだと気づいて、一人で吹き出した。