季節は巡り、隣のあなたはいつでも美しい

「パパー、ダイヤモンドダスト、だしてー」

「出せねえよ……」


 二歳の娘、花菜がまた訳の分からないことを言い出した。


「だして!」

「出ねえよ。どこでそんなん覚えたんだよ」

「朝のニュースです」


 呆れた顔の妻、澪が教えてくれた。

 今朝のニュースで、十二月に珍しく北海道でダイヤモンドダストが観測されたのだと。


「へえ……いや、俺にどうにかできるもんじゃねえから」

「じゃあ、ふじのくんにたのもう」

「お前、藤乃をなんだと思ってるんだ?」


 何でもいいけど、藤乃のところに納品に行く予定がある。

 夕方、花菜が昼寝から起きたところで連れて行くことにした。



「藤乃ー、頼まれてた花持ってきたー」


 そう言って花屋の裏口から顔を出したら、藤乃の息子の藤也が幼稚園の制服姿で駆け寄ってきた。


「とうさん、いないよ」

「とうやくん、ダイヤモンドダストだして」

「なにそれ?」


 子どもらが勝手に話し出したし、藤乃の代わりに嫁の花音(俺の妹だ)が出てきたから、持ってきた花を店に運ぶ。


「ってなわけで、ダイヤモンドダストを出してくれとか言われてさ」

「あはは、藤也もしょっちゅうそういうこと言うよ」

「マジか」

「ぼく、ゆきはだせないけど、しろいのはあるよ」


 聞いていたらしい藤也が自慢げに笑った。

 何かと思ったら、店の倉庫からカスミソウと綿の枝を取ってきた。


「藤也、それは売り物だからダメ」

「ごじゅうえんです」

「五十円じゃないです! 二つで千五百……兄妹価格で千八百円かな」

「何値上げしてんだよ」


 返してこいと言おうとしたのに、花菜が藤也から受け取って目を輝かせた。


「ゆきだ!」

「違えから」

「ふわふわで小さくてしろいよ」


 顔を上げると、藤也と花音が同じような笑顔で俺を見ている。

 なんだこいつら。

 わざとデカいため息をついて、財布から二千円出した。


「釣りはいらねえよ」

「毎度ありがとうございまーす」

「まーす!」


 藤也がくしゃくしゃとカスミソウと綿の枝をラッピングして花菜に渡した。

 おまけだと言ってリボンまでついている。

 ちゃっかりした妹と甥に見送られて店を出た。

 売りに来たのに、売りつけられてしまった……。

 今度、藤乃にふっかけておこう。


 花菜は受け取った花束を気に入って、寝るときまで抱えていたから、まあ……いいか……。ダイヤモンドダストと違って寒くないし。