季節は巡り、隣のあなたはいつでも美しい

 夫の藤乃さんは鼻歌を歌いながら、お店のカウンターでスノーホワイトのクリスマスリースを作っていた。

 クリスマスローズ、白いポインセチア、カスミソウ、白い小ぶりなバラをバランス良く土台に挿していく。

 企業や個人のお客様からの注文も多いし、花屋の店頭に並べればその日のうちにほとんどなくなる。だから藤乃さんはこの時期、延々とクリスマス向けのリースやミニブーケ、アレンジメントを作っていた。

 私は藤乃さんが注文の品を作っている間の店番。

 昼過ぎに一息ついて、リースを作る夫を見ながら遅い昼食を摂っていた。


「こんなもんかな」


 藤乃さんはできあがった真っ白なリースを確認していた。


「花音ちゃん、これ持って。お腹の辺りで。笑って」


 差し出されたリースを言われたとおりに持つ。


「えっと、無表情、んー、胸の辺りに持ち上げて」


 藤乃さんは、よくできあがったリースやブーケを私に持たせて写真を撮る。

 お店のサイトに使うこともあるし、印刷してアルバムにいれていることもある。

 最近は子供たちにも持たせて写真を撮るようになった。


「うん、ありがと。ごめんね、ごはんの途中に」

「それはいいけど、なんで毎回撮るの?」

「花音ちゃんに贈ることを考えて作っているから」

「そ、そうだったんだ」


 夫は真っ白なリースを透明なシートで包んだ。


「一番好きな人が一番きれいに見えるように作ってるんだよ。花音ちゃんは何色でも似合うし、どんな花でも似合うから」


 「なにしろ」と、夫は微笑んで続けた。


「俺の奥さんは世界で一番きれいな人だからね」

「あの、自重してもらって……」

「しない」


 藤乃さんはニコッと笑ってスノーホワイトのリースを店頭に飾りに行った。

 でもすぐにお客さんと戻ってきて、リースを紙袋に入れて差し出した。

 お客さんを見送った藤乃さんは、カウンターを片付け始めた。


「やっぱりね、花音ちゃんに持ってもらってしっくりくると売れるんだよ」

「そういうものかなあ」

「そういうものだよ」


 藤乃さんは余った白いポインセチアとバラを合わせて、ローズマリーの葉を加える。


「俺の奥さんが一番きれいだから」


 そう言って彼は私の耳元に小さなスノーホワイトのブーケを添えた。

 結婚して子供までいるのに、私はいつまで経っても、この人のこういう仕草にドキドキさせられっぱなしだ。