あれこれ話しながら、急な坂道を登っていく。

 後ろで花音が「猿がいる!」「あ、リス!!」と騒いでいるし、ルームミラーに藤乃がずっと花音を見ているのが映っている。

 澪はおとなしく外眺めたり、カーナビ見たりしてる。


「おい、藤乃。この先の駐車場に入れるぞ」

「うん。花音ちゃん、滝を見に行こう」

「修学旅行で来ました。わー久しぶり」


 そういえばそうだったな。

 二十年くらい前のことだから忘れてた。

 車を停めて外出たら、めっちゃ寒い。


「澪、掴まっとけ」

「ありがとうございます……ひゃっ」


 掴まろうとして足を滑らせた澪を慌てて支えた。

 油断したら俺も滑りそうで、マジ怖え。


「花音ちゃんも掴まって」

「はい、ありがとうございます。あっちにエレベーターありますよ」

「寒いしそれで行っちゃおうか」


 ぞろぞろ滝の中腹まで移動する。

 すげー、滝が半分くらい凍ってる。


「お兄ちゃん、写真撮って」

「はいはい」

「あ、次澪さんと一緒に撮ってあげるね」

「由紀兄妹の写真も撮ろうか」

「いらねえ。澪、ふらふらすんな、そこ凍ってるぞ!」


 写真を撮りあって、土産物屋を冷やかして、また車で移動。

 近くのでっかい神社に向かう。


「相変わらずでけえな。澪は来たことあるんだっけ?」

「私も修学旅行以来です。瑞希さん、猿いますよ」

「あれ、有名なやつ以外にもたくさんいるよな。あっちの象見に行こうぜ」

「瑞希、あとで龍見に行こう。キーンってなるやつ」

「なんだっけ?」

「龍の顔のところで音が響くんだよ。キーンって」

「藤乃、説明が下手すぎるだろ」

「藤乃さん、猫のお守り買いましょう! かわいいですよ」

「お守りを持ってる花音ちゃんがかわいいと思う」


 澪は花音の隣で猿のお守りを見ている。

 俺も「お前のほうがかわいい」って言ったほうがいいんだろうか。

 いや、いいか。


「それ、ほしい?」

「えっと、瑞希さんに良さそうなものを探してまして……」

「お前はかわいいな」

「えっ、何でですか?」

「なんかよさそうなやつ頼む」

「頑張ります!」


 その後も神社内を見て回る。

 ぼけっとご本尊の墓見上げてたら、澪が寄ってきた。


「瑞希さん、こういうのお好きですか?」

「少し前に大河ドラマでやってたから、『あの泣き虫だった殿が、こんなに立派になって……』って思ってる」

「私、瑞希さんのそういうところがかわいくて好きです」

「かわいいか?」