「姫華!今日も可愛い、大好きだよ」

「うるさい黙れ、消えろ」

私に甘ったるい言葉を告げるクソ野郎涼本亮介に対して

罵倒を返す私、相内姫華

常磐高校2年5組で毎日のように行われるこのやり取りは新学期が始まってまだ1ヶ月も経っていないにもかかわらず

もうこのクラスでは定番のやり取りになってしまっていた

「マジでゴールデンウィーク姫華に会えないの無理だからデート行かない?」

「誰がわざわざ休みの日にアンタなんかの顔見なきゃいけないのよ!あと姫華って呼ぶなキモイ!」

涼本はどうやら私のことが好きで好きで仕方ないらしいけれど

私はコイツのことが大嫌いだからいい迷惑で

「なんで?姫華って名前可愛いじゃん?」

「お前に呼ばれるのが嫌だって言ってんの!?次呼んだら二度と私の名前呼べないくらいボコボコにしてやる」

こういうチャラチャラしたのも無理だし

これでいて成績も優秀で運動だってできる

顔だって別に悪くないというかどっちかといえばイケメンよりの人間なのは間違いない

だけれど

「は?その程度で俺が諦めると思うなよ?」

「だから!私はアンタのそういう所が嫌いなの!」

こういう自分勝手で私の意見なんて聞かないところとか

そういう所全部ひっくるめて大嫌いで

「お前も諦めねえな?あんなに拒否られてるのに」

「当たり前だろ?惚れた女振り向かせるためならこの程度で諦めるもんかっての」

これは、私を振り向かせたい男と

「姫華もよくやるねぇ」

「無視しても冷たくしても罵倒してもこれとか無敵かよアイツ…ムカつく」

アイツに嫌われたい私の

青春の1ページなんかでは決してない

「負けねえから」

「負けるもんか」

愛と憎しみの戦争なんだ