水曜日、曇り。

あたしが唯一、楽しいと思えることは好きな歌手の曲を聴くこと。


当時はまだ「音楽」だなんて意識はなくて。

好きなヴィジュアル系バンドのメンバーに恋してる気持ちになんかなってたりして。


それでも、常に何かの曲が流れてないと落ち着かなくなった。




兄のお古のCDプレイヤーしかなかったあたしは、お小遣いを貯めてミニコンポを買った。


新しいプレイヤーで、聴き慣れたお気に入りの曲をかけてみる。


あたしの耳にはいつも聴いていた曲が違う曲に聴こえた。
ボーカル。
ギター。
ベース。
ドラム。
キーボード。
音がいくつも聴こえる。

歌声だけじゃない。


当たり前なのに、不思議なショックだった。



それからのあたしの耳には必ず、ひとつの曲が何本もの流れに聴こえた。


ずっと。
その感覚が不思議でたまらなかった。