ロマンスに、キス




佐野はガラス窓の外を見ながら、短く返す。



「あー、お前も?」



――あたしも、って。

イライラして、一人になりたくて、逃げるようにこの空き教室へ来たのに。その先に、佐野がいた。ほんと最悪。ほんと偶然すぎるし、今じゃなくていいじゃん。

だいたい、佐野のスーツのせいで心拍が無駄に忙しい。こいつと一緒にいたくないなら、とっとと出ればいい。それだけのこと。


でも。

未だに嫌なやつだし、ムカつくし、デリカシーなんて欠片もないし、たぶん今日もそのうち何か言ってあたしをイラつかせる。だけど。


あたしのことを“ちゃんと見て”、 “ちゃんと知って”、 “猫かぶってる時と今のあたしの違い”まで、何も言わなくて、気づいてくれるのは、世界で多分、今のところ佐野だけで。

そんな佐野のそばは、悔しいけど、やっぱり安心する。


一歩、佐野に近づく。

その瞬間、佐野はまるで最初からそうするつもりだったみたいに、机に置いてあった紙袋をガサッと漁って──



「お前も、食う?」



焼きそばのパックを突き出してきた。



「……。」



いや、なんで“餌を与えるな迷子の猫”みたいなノリなの。あたし、そんなに食いしん坊扱いされてる? むしろ普段はそこまで食べないし、夜はサラダだけだし、努力してるんですけど?