ロマンスに、キス




廊下に出た瞬間、喉の奥がキリキリ痛む。
ありえない。ほんと、ありえない。

空き教室の前に来たときには、もう怒りが指先まできていた。ドンッと扉を押し開いて、バタンと勢いよく閉める。音が反響する。でも、それでもまだ足りないくらい。



「……はぁ」



深く息を吐く。目の奥が熱い。疲れたのもあって、いろんな感情が混ざって、どうしようもない。



「──あ、メイド」



背中からいきなり声がして、心臓が跳ねた。ビクッとして振り向く。


窓際にもたれかかっていたのは、佐野だった。


……一瞬、誰かわからなかった。

制服じゃない。いつものくしゃっとした前髪でもない。黒いスーツに身を包んで、白い手袋までしている。 髪は丁寧にセンターパートで整えられていて、普段の“無造作で適当”な感じがどこにもない。

まるで、漫画の執事みたい。空気まで違って見える。



「俺のクラス、コスプレ写真館。俺、執事」



軽く顎を上げて言う。


……やばい。

これは、さすがに反則だ。