ロマンスに、キス


*

*

*



文化祭当日。
朝からずっと走り回ってて、目が回りそう。ほんとは、もっと余裕ぶって、ゆったり微笑んで、清楚なメイドさんをやりたかったのに――現実は、戦場。



「お姉さん、かわいいね、インスタとかしてない?」



普段なら、こういう軽いナンパも、表情ひとつで転がす余裕くらいある。でも今日は無理。忙しさで心が削られている。



「えっと、SNSしてないんですっ」



自分でも“一瞬でバレる嘘”って分かる言い方だった。案の定、「絶対嘘でしょ〜!」と笑われ、そのまま腕を掴まれる。


――触らないでほしい。今日は特に、心がささくれてる。


落ち着け。大丈夫。 拳を目に見えない角度でぎゅっと握りしめ、ぐっと息を整える。



「じゃあ、お兄さんがいーっぱいお金使ってくれたら、教えてあげてもいいよっ?」



少しだけ口角を上げて、“天使の柏谷さん”を発動。
これで男は落ちる。

案の定、手がパッと離れて、顔まで赤くして、



「じゃ、じゃあ、これと…こっちも…!」



……はい、思うツボ。