ロマンスに、キス




呼吸が一瞬止まるくらいの距離感。その無表情な顔が、スクリーンの光じゃなく蛍光灯に照らされて、やけに鮮明に見えた。



「悪い。大丈夫?」

「っ、さ、の…」



名前が勝手に口から出た。息が詰まる。



「ご、めん。前、見てなかった」



そう言った瞬間、腰からそっと手が離れた。

だけど佐野はそのまま、まっすぐあたしの顔を見てくる。じーっと、目を逸らさない。

なに?ペンキはちゃんと落としたし、変なとこ汚れてないはず。



「あか」

「…なにが?」



赤?ペンキ?え、どこ?どこの話?



「顔、赤い」

「…気のせいじゃない?」

「ふーん」



ペンキじゃなかった。あたしの顔、の話。
そんなの、仕方ない。こんな至近距離で急に支えられたら、誰だってこうなる。

バタバタと手で顔を仰ぎながら、熱を逃がそうとする。



「文化祭、なにすんの?」



廊下の壁にもたれかかったまま、佐野が何気なく聞いてくる。

……言いたくない。絶対笑われる。でも、黙っててもどうせいつかは知られる。