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文化祭の準備期間、ほとんどの人が放課後残って作業をしていた。
あたしも、その中の一人。
……ただ、帰るのが遅くなると睡眠が削られるのがきつい。そこだけは、本気で嫌。
「自販機行ってくる〜」
そう声をかけて教室を抜ける。ずっと看板の色塗りで肩が凝りすぎて、ちょっとひと息つきたい。
トイレの鏡で自分の顔を見ると、頬のあたりに白いペンキがちょんと付いていた。気づかなかった。まあ、白ならバレないか。ハンカチを濡らして、ぽんぽんと叩いて消す。
はぁ……疲れる。でも、準備期間もあと少し。頑張ろう。
そう自分に言い聞かせて、トイレを出た瞬間だった。
「うおっ」
「…っ、」
ドンッと、胸の前で空気がつぶれるような衝撃。
誰かとまともにぶつかって、反射的に目を瞑った。
よろけた身体を、ぐっと誰かの腕が支えた。腰にまわされたその手が思ったよりもしっかりしていて、反射的に目を開ける。
至近距離に、佐野。
――近い。


