ロマンスに、キス




2人ともコーヒーを飲み終えて、特にすることもなく帰ることにした。送ってくれると思っていたし、今まで送ってくれなかった男なんていなかったから、少し油断していた。



「じゃーな」



普通に、駅の改札前で言われる。



「送ってくんないの?」



じとっと視線を向けると、佐野はヘッドフォンを弄りながら言った。



「俺、反対だから」



そりゃ仕方ないか……なんて思えるわけがない。



「じゃあ、あたしが悪いやつに捕まったらどうするの?」

「金玉蹴るくらいすれば?」



なんでこいつはこんなにもデリカシーがないのか。あたしのことを、何だと思っているんだろう。

佐野は手を振って、反対方向に歩き去る。あたしも、無言で歩き出す。どちらも、一度も振り返らない。


それでも。
佐野といると、不思議と楽だった。
好きなものを堂々と言える。初めて、そんな時間だった。