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放課後、駅で待ち合わせ。
そういえば、佐野と連絡先を交換していない。だから、待たされるとどうしようもない。
「君、ひとり?」
佐野が来ないから。気づいたら目の前に眼鏡の男が立っていた。
「暇だったら、お茶でもしない?」
制服着てる相手によく声かけられるな、とぼんやり思う。
「この後、用事あるんです」ってニコッと笑うと、 「かわいいね」なんて言ってくる。そんなの分かってる。
でも、佐野。あたしをいつまで待たせるつもりなの。
のらりくらりと笑顔でかわしていると、背後から低い声が降ってきた。
「おい」
佐野の声だった。
「お前、どこにいるか分かんねーだろ。探したわ。で、誰?」
ヘッドフォンを外して、眼鏡の男を一度だけ冷たく見る。その気迫に負けたのか、男は「またね」とか言い残して去っていった。
あたしは佐野を見上げて、少しだけ間を置く。
「…あたしのこと、どれだけ待たせるつもり?」
「はいはい、ごめんごめん」
……こんなことで怒ったらダメ。 あの作戦を遂行させるんだから。
「ごめん」で済むと思うな。映画のあと、必ず落として振ってやる。そのためなら、今は笑顔で我慢してやる。


