もういい、帰ろう。
そう思って屋上の扉に手をかけた瞬間――
「放課後、ひま?」
不意に投げられた声に、足が止まった。
「……何企んでんの?」
振り向くと、佐野はポケットに手をつっこんだまま、横目でこっちを見てくる。
「見たい映画あんだけど、付き合ってくんない?」
……なんであたし。この学校、女なんて腐るほどいる。もっとチョロそうなのも、佐野のこと好きそうなのも。 なのに、なんでわざわざあたし?
眉をひそめたまま固まる。意味がわからない。この男の考えることは一生わからない気がする。
…でも、映画か。 こいつと一緒に行くのは癪だけど、映画そのものは嫌いじゃない。特にホラーとかアクションとか、刺激の強いものが好きだ。
「……ちなみに、何系?」
「ホラー」
……まあ、あたしは平気だけど。普通、女の子に誘うジャンルじゃない気もする。そういう気遣いの欠片がないところが、この男らしい。


