ロマンスに、キス




ふぅ、と小さくため息。さっさと教室戻って、お弁当でも食べて気分切り替えよう。

そう思って扉へ向かいかけた、その時だった。



「お前、さすがだな」



屋上の奥、ちょうど死角になってる場所から声が落ちてくる。


――ん?

ゆっくりと姿を現したのは、黒いヘッドフォン。佐野。
なんで、こいつが、ここに。というか……最初から、いたってこと?



「お前、いつもあんなんしてんの?おもしれー」



ケラケラ笑う佐野。その軽い笑い声を聞くだけで、足元から苛立ちが湧く。
ほんとに、性格悪い。その顔、ほんとに一度くらい踏みつけても罰当たらないと思う。

胸の奥で、怒りがじりじりと熱を帯びる。昨日からずっと、勝手に乱されてばかり。
どうしてこの男は、いつもタイミング最悪で現れるんだろう。



「……あんたには関係ないでしょ」



これ以上関わらないって決めたのに、どうしてこうなるのか。



「それより、あたしの変な噂とか流してないでしょーね?」

「変な噂ってなんだよ」



言わなくても分かれ。こいつと会話すると、ほんとに疲れる。
ため息が勝手に漏れる。