ロマンスに、キス




嬉しさが溢れすぎていて、見てるこっちが疲れる。早く終わらせたい。



「じゃ、じゃあ、これからよろしくねっ」



そう言って、右手を差し出してきた。

……チラッ。
見えたその手に、ぞっ、と背筋が冷える。汗。多すぎ。てか、滴ってない? 本気で無理。絶対に握りたくない。



「……あたし、いま汗かいてて…ちょっと恥ずかしいなぁ〜」



かわいこぶった声でごまかす。実際は一ミリも汗なんてかいてない。でも、もうあの手だけは無理。



「そ、そっか〜。柏谷さんの汗なんて、気にならないんだけどっ」



ぶつぶつ呟きながら、まだ手を出したまま固まってる。

ほんと、やめてくれないかな。気持ち悪い。昼休みをこんな汗だく男子に費やすとか、人生の無駄すぎ。でも、天使の顔は崩せない。にっこり笑って、空気だけは優しく保つ。
心の中では、全力で舌打ちしてた。



「これから、よろしくね」



そう言って、満足そうに笑いながら屋上を出ていった。
……よろしくね、じゃない。よろしくなんて、しない。 むしろ二度と話しかけないでほしい。