負け犬のメイサちゃんは100日後に本当の恋を知る

「メイサー、帰ろー」

「はいよー」


 部活を終えて部活棟から出たところで藤也が手を振っていた。

 普通に駆け寄って並んで歩いてるけど、私とこいつの関係って何?

 学校を出たところで、顔を上げた。


「藤也って、なに?」

「は?」

「いやさ、あんたって、私のなんなのかと思って」


 後輩なのは確かだけど。


「何がいい?」


 ふいに手の甲が触れる。

 すぐ離すと思ったのに、手を擦り合わせられて、えっ、なに……?


「俺としてはこの46日間、飼い主のつもりでいたけど」

「飼い主!? 私のドキドキ返してよ!!」

「あ、ドキドキしたんだ? 手、つないでやるよ」

「いらないよ!!」


 藤也の手が、私の手を掴む。

 反対の手で髪をくしゃって撫でられて、これって犬扱いってこと!?


「メイサ」

「な、なによう」

「お前は、俺に何になってほしい?」


 真っ直ぐに見つめられて、どうしよう。

 あんたは、私のなんなの!?


「藤也、やっぱりその子、彼女なんじゃない?」

「ひえっ」

「っ! このクソ親父!!」


 後ろから声がしたと思ったら、藤也のお父さんが車から顔を出していた。

 藤也は怒った顔で私を後ろに庇った。


「そう思うなら邪魔すんなっつったろ! ……お袋に言うぞ」

「それは困る。また花音ちゃんに怒られる」

「なら帰れ。今すぐ帰れ!」

「はいはい。じゃあね、メイサちゃん。今度うちにも遊びにおいで」

「余計なこと言うな!!」


 藤也のお父さんは笑顔で窓を閉めて、車を出発させた。


「ごめん、クソ親父が」

「それはいいけど。なんで私の名前知ってるの?」

「それもごめん、桔花と蓮乃がバラした」

「花音ちゃんって?」

「お袋。親父、お袋のこと名前で呼ぶんだよ。いい歳してさあ……まあ、俺のせいなんだけど」

「そっか。や、大丈夫。おもしろかったから」

「面白い言うなよ」


 藤也がすっかり不貞腐れちゃったから、私は手を取って歩き出す。

 駅まで黙ったまま藤也は着いてきた。


「もうちょっと、考えていい?」

「なにを?」

「あんたに、何になってほしいか」

「……わかった」

「またね、ハニー」

「うん、また、ダーリン」


 そっと手を離す。

 完全に離れる前に、指先が少し擦れ合って、それから離れた。