放課後、部活に行こうとしたら呼び止められた。


「負け犬せんぱーい」

「ま、負け犬言うな! 三枝メイサ!」

「知ってる。あ、ニャイン教えといてよ」


 生意気な一年生はスマホを取り出した。

 見せられたコードを読み込んで友達申請しておく。

 アイコンは、白いイルカのぬいぐるみ?


「なんで知ってるの……?」

「園芸部で有名だからな。うちのかわいい先輩泣かした嫌味なサッカー部の女マネ」

「う……、あんた、園芸部なの……?」

「そうだよ。俺、須藤藤也」

「……やっぱり、柊ちゃんみたいなおとなしくてかわいい子が人気なんだ」


 つい拗ねると、須藤は「はっ」と鼻で笑った。


「そういう鬱陶しい話し方する女がモテるわけねーだろ」

「うっさいなー」

「ついでに『あたしの方が颯のことわかってるしい』っていうマウントもキモくて無理」

「なっ、何でそんなことまで!」

「普通にこの辺で言ってただろ。園芸部の倉庫も近いし、運動部の部室棟だって目と鼻の先だ」


 そうだった。

 ていうか、私、そんな風に見えてたんだ……。


「もうちょい周りの目を気にしろよ。ほら」


 須藤が突然、私の手を取った。


「えっ、なに!?」

「こうやって歩いてたら、それだけで『そういう関係』に見えるってこと。ほら、昨日かわいく笑えって宿題出したろ? 全然ダメ。まあ、まだ3日目だし」


 だから、何!?

 意味わかんないけど???

 須藤はそのまま私を部室棟まで送り届けた。

 何だったの……?

 手が、訳わかんないくらい、汗かいてる。