きらめきは隣にいる

4話

〇星奈の家、キッチン(夜)

星奈がマカロンを作っている。3話で助けてくれた碧へのお礼。

星奈(よし。うまく膨らんでくれますように!)
星奈M『前に』

星奈の回想のコマ

碧『マカロンとか好きですね…いちご味のやつ』
星奈『へー』

星奈M『て言ってたからマカロンにしてみたけど』
星奈M『喜んでくれるかな』

星奈が天板をオーブンに入れるとスマホに通知が届く。
スマホを手に取る星奈。
画面には碧(そらねむ)が新しい動画を投稿したと表示されている。

星奈(あ…)
星奈(そうだ…新曲あげるって言ってたっけ)

アプリを開いて碧(そらねむ)のチャンネルを見る星奈。新曲のサムネは今までの動画とは全然系統の違う可愛いイラスト。

星奈(またちょっと違う感じだ。少女漫画みたい)
星奈(こういう絵好き)

イヤホンをつけて曲を聴く星奈。ポップな曲に乗せて夢に向かって頑張る女の子を歌った曲。

星奈(これって…)
星奈(もしかしなくても…わたし、だよね?)

回想のコマ。

碧『…俺、やっぱり櫻井さんのこと諦めきれないです』
碧『近いうちにまた新曲アップするんで、聴いてください』

星奈(この前といい今回といい、重たい思いをぶつけられてる気がする…! こんなに可愛い曲なのに…!)

曲を聴き続ける星奈。

星奈M『…湊くんには』
星奈M『わたしが、こんなふうに見えてるんだ』
星奈(ここまでキラキラしてるつもりはないけど…)
星奈(見てくれてる人がいるのは、嬉しいな)

星奈が碧(そらねむ)の動画に「可愛い曲!」とコメントを残すと碧(そらねむ)から即いいねと「ありがとうございます!」と返信がくる。

星奈(は、はや…!)

と言いつつコメントを見て微笑む星奈。

星奈(あ、そうだ…)

〇ファミレス(夜)

バイトを終えて店を出る碧に声を掛ける星奈。

星奈「湊くん!」
星奈「お疲れさま。今日はこのまま帰るの?」
碧「お疲れさまです。そうですね。用事とかもないんで…」
星奈「そっか」
星奈「えっと…これ」

紙袋を碧に渡す星奈。

星奈「このまえ助けてくれたお礼に、マカロン作ったんだ。湊くん、好きだって言ってたから」
碧「え…」
碧「櫻井さんの…手作り…?」
星奈「うん。お口に合えばいいんだけど」
碧「合います! 合うに決まってるじゃないですか!」
碧「…ありがとうございます」
星奈「今日も一緒に帰っていい?」
碧「えっ、あ、はいっ! ぜひ! ぜび!」
星奈(噛んでる…)

一緒に歩き出す2人。

星奈「湊くんって、曲作りは独学なの?」
碧「はい…。最初はスマホのアプリで作ってたんですけど、だんだん欲が出てきたっていうか…もっとこだわりたくなって、父親からパソコン譲って貰って」
星奈「独学であのクオリティはすごいね」
碧「まだまだですよ。荒削りなとこもあるし…もっとよくできると思うんです」
星奈(湊くん)
星奈(結構負けず嫌いっていうか、向上心があるんだよなぁ)
碧「…櫻井さんは?」
星奈「ん?」
碧「お菓子作り。独学ですか?」
星奈「うん、基本はね。Tik〇okとかイ〇スタとかで流れてくるレシピ試してみたりしてるよ。まずはレシピ通りに作って、上手くできるようになったら自分なりにアレンジとかもしてみたり…」
星奈「そのマカロンは、料理研究家の先生が載せてたレシピを参考にしたんだ」
碧「そ、そうなんですか…」
星奈「…なんかちょっと引いてない?」
碧「いや、引いてるとかじゃなくて…陽キャだなって…」
星奈「あはは、なにそれ!」
碧「だって…イ〇スタとか…Tik〇okとか…」
星奈「えー湊くんだってアカウント持ってるじゃん」
碧「俺のは、宣伝用なんで…」
星奈「わたしもお菓子以外は載せないけどなー。一緒だって!」
碧(そういうとこですよ…)
星奈「…ねえ」
星奈「この前の新曲の歌詞って…わたしのこと…だよね?」
碧「…気づいてくれたんですね」
星奈「気づかないほうがおかしいよ…。細かいところも…なんか、すごい…わたしっぽいし…あんなにキラキラはしてないけど…」
星奈「湊くん、よく見てるんだね」
碧「そりゃ…好きな人のことですから」
碧「…俺、いままでは自分の中のもやもやとか…あんまり褒められないような感情を曲にぶつけることが多かったんです。最初にバズった曲もそうだったし」
碧「それで、あわよくば誰かに見つけてほしいって思ってて」
碧「…櫻井さん、この前、俺に夢はあるかって聞きましたよね」
碧「それが、俺の夢でした。櫻井さんの夢に比べたら、しょうもないですよね」
星奈「そんなこと…」
碧「でも」
碧「今は違います。…いや、違くないんですけど…。もう1つ、夢ができたっていうか」
碧「俺、いつか誰かに曲を提供したり、タイアップの曲を作ってみたいんです」
碧「そう思い始めたのも、櫻井さんがきっかけで」
星奈「え…わたし?」
碧「はい。…櫻井さん見てたら、この人を曲にして残したいって思いはじめて」
碧「それで…誰かのことを思って曲を作るのも楽しいんだって、気づいたんです」
碧「だから、お礼言わせてください。ありがとうございました」
星奈「わ、わたしは…何も…」
碧「それでもです」

見たことない笑顔でそう言った碧に驚きとときめきが混ざった表情の星奈。
そうこうしているうちに星奈の家の近くのコンビニに着く。

碧「あ…コンビニ着きましたね」
星奈「あ…ほ、ほんとだ! じゃあわたし、ここで!」

走り出す星奈。途中、立ち止まって振り向く。

星奈「湊くん!」
星奈「その、中にあるやつ! いらなかったら捨ててもいいから! 」

再び走り出す星奈。星奈が見えなくなった後に碧が紙袋の中身を見る。

碧(捨てるわけないのに…)

紙袋の中に入ったマカロンの箱の上にメッセージカードが置かれている。メッセージカードには星奈のL〇NEのIDが書かれている。
驚いた後に嬉しそうな笑顔を浮かべる碧。