きらめきは隣にいる

3話


〇ファミレス、レジ(昼)

レジで接客中の星奈。お客さんが店を出た後、店長に話しかけられる。

星奈「ありがとうございましたー」
店長「櫻井さん」
店長「ごめんねー、休みだったのに出てもらっちゃって」
星奈「いえ。今日はなんの予定もなかったので」
店長「いやー助かる! 最初は湊くんに声掛けたんだけど、忙しいみたいでさ」

碧の名前を聞いてどきりとする星奈。

星奈「湊くん…ですか?」
星奈M『あれから』
星奈M『なんか気まづくて、バイト一緒になっても必要なこと以外喋らなくなっちゃったんだよなぁ…』
店長「そう」
店長「あの子さ、ミスが多いでしょ?」
店長「最初の頃なんか、皿は割るしお客さんは違う席に案内するし配膳ロボットにはぶつかるしで、大変だったよね」
星奈「あはは…」
店長「でもさ、最近ちょっとづつ改善してきてると思わない?」
店長「他の人に迷惑掛けたくないんだってさ。こんな自分と一緒に仕事してくれてる人に、いつまでも甘えてるのはダメだって」
星奈「それ…湊くんが…?」
店長「うん。特に櫻井さんにはよく助けて貰ってるから、逆に自分が助けられるくらいになりたいって」
星奈M『湊くん』
星奈M『そんなこと考えてたんだ』
店長「あとなんか、絶対に辞めたくないんですって言ってたなぁ」
店長「すごい必死だったよ。ちょっと怖いくらい」
星奈「あ、あはは…」

苦笑いの星奈。そんな星奈を見て微笑む店長。

店長「青春だねぇ」
店長「うんうん。それじゃ、あとちょっとよろしく!」

店長がその場から去っていく。それを見送る星奈。

〇星奈の部屋(夜)

星奈が部屋着でベッドに寝転がりスマホを見ている。画面には碧(そらねむ)の動画が映っている。

星奈(湊くんがあんなこと考えてたなんて…)
星奈(なんか…悪いことしちゃったなぁ…)
星奈(でも、同情でOKされても嬉しくないだろうし…でもでもー…)

新着動画の通知がくる。碧(そらねむ)が以前shortで投稿した曲をフルでアップしている。通知を見てどきりとする星奈。

星奈(そっか、通知くるようにしてたんだっけ)
星奈(どんな曲になったんだろ…)

動画を再生する星奈。好きな人に対する重めの感情を歌った曲が流れる。ところどころ星奈と碧の事では?という歌詞も有。

星奈(あ、愛が重い…!)
星奈(てかこれ、私と湊くんのことだよね!?)
星奈(この辺とかこの辺とか、なんか身に覚えが…!)

曲を聞き続ける星奈。

星奈(でも)

星奈の回想。店長と話していた時のコマ。

店長『他の人に迷惑掛けたくないんだってさ。こんな自分と一緒に仕事してくれてる人に、いつまでも甘えてるのはダメだって』
店長『特に櫻井さんにはよく助けて貰ってるから、逆に自分が助けられるくらいになりたいって』

回想終わり。再びベッドに寝転がり曲を聴く星奈のコマ。

星奈(あんなこと聞いたら、ちょっと見る目変わっちゃうよ)

〇時間経過。数日後。ファミレス、バックヤード(昼)

星奈がスマホで碧(そらねむ)の動画を見ている。
碧が扉を開けて中に入ってくるも星奈はスマホに夢中で気づかない。

碧「お疲れ様です」
星奈「えっ!?」

星奈が顔を上げると悠斗がいる。

星奈「あ…」
星奈「お、おつかれさま…」

碧が星奈のスマホの画面に自分の動画が映っていることに気がつく。

碧「櫻井さん、それ…」

店長が扉を開けて中の2人に声を掛ける。

店長「櫻井さん、湊くん、お疲れ!」
店長「今日、2人ともいつもより長いよね? 休日だから、ちょっと忙しくなりそうでさ。着替えたらすぐ来て!」
星奈「は、はい! わかりました!」
碧「…わかりました」

星奈が慌てて出ていく。星奈の背中を見送る碧。

〇時間経過。数時間後。外(夜)

バイト終わりの星奈が店の外に出ると碧が立っている。

碧「お疲れ様です」
星奈「み、湊くん!? 先に帰ったんじゃ…」
碧「今日、いつもより遅いんで…。送ります。こんな時間に女の子1人じゃ危ないし」
星奈「そんな気つかってくれなくてもいいのに…」
碧「…櫻井さんになんかあったら嫌なんで」

ちょっとどきっとする星奈。

星奈「…ありがとう」
星奈「じゃあ、お願いします」

一緒に歩き出す2人。

碧「…新曲、聴いてくれたんですね」
星奈「…気づいてたんだ…」
碧「スマホの画面見えちゃって」
碧「たしか、前もこんなことありましたよね」

以前(2話で星奈が碧のスマホの画面をたまたま見てしまったこと)を思い出して柔らかく笑う碧。

星奈(そういう顔するんだ…)
星奈(…なんか、どきどきしちゃう)
碧「今回の曲、どうでした?」
星奈「う、うん…すごくよかった…」
碧「具体的にどの辺が?」
星奈「え、えぇ? えーと…shortのイメージを壊さないまま、フルになってて…」
碧「他には?」
星奈「…重いけど…あの子の隣にいるために、頑張ってるのかなって…」
男A「こんばんはー」

大学生くらいの男2人組が星奈に声を掛けてくる。碧のことは無視。

男A「こんな時間になにしてんの? バイト帰りとか?」
男B「お、かわいー。高校生?」
男A「俺たち暇しててさー。どっか一緒に行かない? お兄さん達が奢ってあげるから」
星奈「…わたし、もう帰るんで…」
男B「もう帰るって! かわいー!」
男A「いいじゃん。そっちのお子様はほっといて俺たちと遊ぼーよ」
星奈(なにこの人たち…! ちょっとお酒臭いし…!)
星奈「あの!」
碧「すみません」
碧「この人は、俺と一緒にいるんで」
碧「他の人探してください」
男A「はあ? なに…」

じっと男2人を見つめる碧。表情には少しだけ怒りが滲んでいる。

男A「ちっ…行こうぜ」

男2人が星奈と碧から離れていく。ほっとする星奈。

星奈「ありがとう」
碧「いえ。大丈夫ですか?」
星奈「うん」
星奈「…正直、ちょっとびっくりした。湊くん、あんな対応できるんだね」
星奈(もっと、おどおどするかと思ったのに…)
碧「…好きな人のことは、ちゃんと守りたいじゃないですか」
碧「暴力とかは、まあだめですけど。つーか、本当は俺以外の人と話してほしくないし触ってほしくないし俺にだけ笑いかけてほしいし俺以外見てほしくないけどそれは櫻井さんの夢の邪魔になるし物理的にも無理だし」
星奈「み、湊くん?」
碧「…すみません」

そんな話をしながら歩いているうちに星奈の家の近くのコンビニの前に着く。ちょっとほっとする星奈。

星奈「家、もう近いからここまででいいよ」
碧「え…家まで送りますよ。ご両親に挨拶とか…」
星奈「本当に大丈夫だから!」
星奈M『なんか外堀から埋めようとしてない!?』
碧「…わかりました」
星奈「うん。じゃあ、また今度」

歩き出す碧の背中を見送る星奈。数歩歩いた後、碧が振り向く。

碧「櫻井さん」
星奈「な、なに?」
碧「…俺、やっぱり櫻井さんのこと諦めきれないです」
碧「近いうちにまた新曲アップするんで、聴いてください」

再び歩き出す碧。碧の背中が見えなくなった後に、残された星奈が独り言。

星奈「…ちょっと」
星奈「かっこいいとか思っちゃった」