きらめきは隣にいる

1話

〇ファミレス

入り口で接客中の星奈。お客さんは2人。

星奈「いらっしゃいませー!」
星奈M『櫻井星奈。高校2年生。将来の夢はパティシエ』
星奈「2名様ですね、ご案内いたします」
星奈M『好きなことを仕事にしたいと思った時から、練習も兼ねて毎日のようにお菓子を作ってるんだけど…』
星奈(材料費って想像以上にかかるんだよねー…)

星奈がお客さんを席まで案内する。

星奈「ごゆっくりどうぞー」
星奈M『だからこうして、今日もバイト中』

少し離れた席で碧がお皿を落として割ってしまう。

碧「あ…!」

星奈がそれに気がつき慌てて悠斗の元に向かう。

星奈「大丈夫!?」
碧「すみません、手が滑って…」
星奈M『この子は湊くん。ちょっとポンコツなバイト仲間』
星奈「謝らなくていいよ。割れちゃったやつ、危ないから気をつけてね」
星奈「掃除用具持ってくるから待ってて」
碧「ありがとうございます…」

〇場面転換。ファミレスのバックヤード

星奈がまかないを食べていると同じまかないを持った悠斗が中に入ってくる。

碧「櫻井さん。さっきは、ありがとうございました」
星奈「いいよー。わたしも忙しい時にミスすることあるし」
星奈「もっと人増やしてくれたら、ちょっとは楽なんだけど…」

碧が星奈の斜め前の席に座る。

星奈「配膳はみーこさんがやってくれるし、注文はタブレットだからまだいいけど…」※みーこさんは配膳ロボットのこと。従業員の間でそう呼ばれている
星奈「それでも大変だよね」
碧「そう、ですね…」
碧「あの、櫻井さん」
星奈「ん?」
碧「俺、このバイト向いてないんですかね…見ての通り陰キャだし、ミス多いし、声小さいってよく言われるし…」

苦笑いの星奈。

星奈(な、なにも言えない…)
星奈(話題を変えよう…!)

星奈「湊くんは、どうしてバイトしてるの? 何か欲しいものがあるとか?」
碧「…新しいパソコンが欲しくて…」
星奈「へー! どんなやつ?」
碧「…ゲーミングPCですね。て言っても、ゲームするためじゃなくて曲作るためなんですけど。今使ってるのが16GBなんですけど、どうせならもっと増やしたいなって。あとキーボードとかスピーカーとかヘッドフォンとかも一緒に…」
星奈「へ、へー…?」
碧「あ…すみません、つい…」
星奈「ううん。こっちこそごめん。わたし、スマホしか触ったことなくて…あはは…」
星奈「湊くん、音楽やってたんだ」
碧「まあ…趣味程度にですけど」
星奈「どこかで聞ける?」
碧「…ここで…」

碧がスマホを取り出して操作後、星奈に画面を見せる。画面には登録者が1000人程度の碧(そらねむ)のチャンネルが表示されている。アイコンは男性の横顔を描いたイラスト。

星奈「そらねむかぁ…フォローしていい?」
碧「えっ」
星奈「あ、ごめん。そういうの嫌なタイプ?」
碧「ぜ、全然! ぜんっっぜん! お願いします!」
星奈(なんか急に勢いよくなったなぁ…)

星奈が碧(そらねむ)のチャンネルをフォローする。

星奈「これでよし。あとで曲も聴いていい?」
碧「…どうぞ…」
星奈「やった! ありがとう!」
星奈「楽しみだなー」
碧「あの…」
碧「櫻井さんは…将来、パティシエになりたいんですよね?」
星奈「うん、そうだよ」
碧「その…言いたくないなら、答えなくてもいいんですけど…」
碧「バイトしてる理由って…親に反対されてるから、自分で学費貯めてるとか…」
星奈「(笑いながら)違う違う! ママとパパは応援してくれてるよ」
星奈「お菓子作りって、結構お金がかかるんだよね。材料以外にも、専用の型とか器具も使うし」
星奈「わたしは美味しいだけじゃなく見た目でも楽しめるものが作りたいから、特にお金かかるんだ。将来は、お菓子も店内も可愛くてお洒落だねって言われるようなお店を開きたくて」
星奈「それでお客さんに美味しいねって言って貰えたら、すごく幸せなことだなぁって」
碧「……なんか…」
碧「すげー…キラキラしてる…」
星奈「そうかなー。欲望だらけじゃない?」
碧「いや…ほんと、別世界の人っていうか…」
星奈「えーそんなことないと思うけど…」
碧「いや、ほんと…すごいです…」
星奈「湊くんは、夢とかあるの?」
碧「……」
碧「俺は……」

星奈のスマホのアラーム音が鳴る。

星奈「あ、もう休憩終わりだ。わたし、先に行ってるね!」

星奈がバックヤードから出て行く。一人取り残された碧。

碧「夢…」
碧「あることはあるけど…」
碧「櫻井さんみたいに、綺麗なものじゃないですよ…」