夜と最後の夏休み

 買い物を済ませてスーパーを出た。先ほどより暗くなった空にいくつかの星が光っている。


「ごめんね、全部持たせちゃって」

「そんなに重くないから大丈夫」


 ちょっと嘘。砂糖とめんつゆ、それからサラダとかき揚げは普通に重いしかさばるから持ちにくい。でもそんなかっこ悪い不満を美海に言いたくないのだ。

 ちょっと重いから手を引っ張ってと甘えたい気もする。かっこ悪いかな。美海にがっかりされちゃうかな。頭で考えすぎた言葉はこんがらがって出てこない。


「夜」

「うん?」

「やっぱいい」

「気になる」

「……今度言う」


 薄暗くて美海がどんな顔をしているかわからない。詩音に聞けばこんなときなんて声をかければいいのか教えてくれるかもしれないけど、詩音はいない。むしろ、情けないとかかっこ悪いとか怒られそう。

 あとちょっとで家につく。周りには誰もいなくて、街灯もない。


「美海」

「なあに」

「やっぱりちょっと重いから、手、引っ張って」

「いいよ」


 しょうがないなと笑って美海は手を引いてくれた。小さいけど僕の手をしっかり握ってくれる、力強い手。


「ありがと。ごめん、かっこ悪くて」

「ううん。私もつなぎたかったから」


 ゆっくりゆっくり家まで歩く。けどすぐについてしまった。


「ありがとう、夜。助かった」

「僕が勝手についていっただけだよ。またね」

「うん。夏祭り、楽しみにしてる」


 手を離すのが惜しい。でも明日もあるし、あんまり遅くなると母さんにも匠海さんにも怒られる。だから観念して手を離した。


「僕も、美海と夏祭りに行けるのを楽しみにしてる」


 今度こそと手を振って、僕は自分の家に戻った。