夜と最後の夏休み

 しばらくしゃべっていたら、予告通りお兄ちゃんがおやつを持ってきてくれた。


「前に作ってたやつだ」

「そうそう。美海が美味いって言ってたから」


 差し出されたのはジャーパフェ。ガラスのジャーにクリームや果物がたんまり盛り付けられている。


「……なんか、詩音のは豪華だね」

「当たり前だろ、お客さんなんだから」

「ありがとうございます」


 詩音は目を輝かせてパフェを受け取った。


「お茶のおかわり置いとくから、ちゃんと水分補給しろよ」

「はーい、ありがと」


 兄は去っていき、詩音はニコニコしながらパフェを食べた。


「おいしいね。すごいなあ美海のお兄さん。私にもあんなお兄さんほしい」

「兄としてはあげられないけど、彼氏にならいいよお」

「詩音、そういうのわかんないからなー」

「そうだよねえ」


 詩音はまたちょっとしょんぼりしつつ、手は止めずに食べ続けた。


「相手が詩音を好きでいてくれても、それを返せないのは申し訳ないし、匠海さんはいい人だから、きっともっときれいなお姉さんや、素敵な人がいる」

「それはわかんないけど……。そもそもお兄ちゃんは詩音になにも言ってないし」

「それもそうだ」


 パクパクとパフェを食べて詩音は立ち上がった。


「じゃあ、そろそろ帰るね」

「うん。手紙書くよ」

「楽しみにしてる。受験勉強で返事は遅くなっちゃうけど、でもちゃんと読むし、遅くなっても返事書くから」


 ジャーを台所に置いて二人で玄関に向かった。詩音は金魚を少し眺めてから、


「またね」


 と言って出て行った。

 まるで明日も会えるような、そんなあっさりした別れだ。

 詩音が『また』と言うのだから、また会える。

 私たちは、そう思えるだけの友達だ。